虫师日文剧本1-15集


2023年12月28日发(作者:世卫组织不建议打加强针)

绿之座

ヌイ:およそ远しとされたもの、下等(かとう)で奇怪(きかい)、见惯(みな)れた动植物(どうしょくぶつ)とまるで违(ちが)うとおぼしき物たち、それら异名(いみょう)ないちぶんを人は古(ふる)くから恐(おそ)れを含(ふく)み、いつしかそうして、「虫」(むし)と呼(よ)んだ。/在很久以前有一生物,低等且离奇。是与常见动植物截然不同的生物。这微妙的成员,自远古以来人们就非常敬畏,不知从何时起,称他们为【虫】。

廉子:谁(だれ)かくる。なんか妙(みょう)なやつがくる。谁かくる。/

ギンコ:なんかいまいたなあ。猿(さる)かね?しかし、绿(みどり)が异様(いよう)なくらい鲜(あざ)やかなところだなあ。ここは。/刚才好像有什么东西,猴子吗?不过,绿鲜艳的有些不正常呢。这里。

ギンコ:生来(せいらい)、绿や水(みず)、生命(せいめい)を呼ぶ体质(たいしつ)とでもいうのか。そういうものを持(も)つ人间(にんげん)が稀(まれ)にいる。/天生,有像绿和水一样能召唤生命的体质,拥有这种体质的人非常稀有。

森罗:左手(ひだりて)ならもし大丈夫(だいじょうぶ)だな。えっと、もともと左手が利(き)きだし、书(か)きやすいなあ。しなった、そうだったか。これらの文字(もじ)はもともと絵(え)なんだ、象形文字(しょうけいもじ)というやつで、これらはこれでいいとして。おい、こら、鸟(とり)。/用左手写的话没问题啊。呃。本来就是左撇子,写起来真顺畅。遭了,原来是这样啊。这些文字本来就是图形,叫做象形文字。这些的话这样就好。喂,过来,小鸟。

ギンコ:何だ、こりゃ。/什么啊,这是。

森罗:かってに外(そと)にでるじゃない。/别随便跑到外面去。

ギンコ:墨(すみ)?/墨汁?

森罗:あっ、み、见た?/啊,看,看见了?

ギンコ:ああ、それはもうばっちりと。君、いおろい森罗君?/啊,被我一捏就。你是五百藏森罗?

森罗:ああ。/嗯。

ギンコ:书简(しょかん)読(よ)んでもらったかな。/读过我写的信了吧

森罗:じゃ、あなたが虫师(むしし)のギンコさん?お断(ことわ)りの手纸(てがみ)を书(か)いたんです。これまでもなんとかこう言(い)った调査(ちょうさ)の申(もう)し込(こ)み入(い)れはありましたが、すべて断(ことわ)ってきました。祖母(そぼ)の世遗言(よいごん)なんです。仆(ぼく)のその性质(せいしつ)を広(ひろ)めてはならない、そして、できるかぎりにうらせにおくこと。ご覧(らん)になったように、昔(むかし)からぼくがものの形(かたち)を象(かたど)ると、それは既存(きそん)の生物(せいぶつ)でなくとも生命(せいめい)を持つんです。でも、新たな生命を乱すなど人の指定所有(していしょゆう)ではない。八百万(やおよろず)の神(かみ)の怒(いか)りをうける、といって、左手(ひだりて)でものを描くことを祖母に禁じられました。あっ、右手(みぎて)で描くのは大丈夫ですけど、この间(あいだ)指(ゆび)怪我(けが)しちゃいました、それで先のようなことに。/那你是虫师银古先生?我正在写回绝的信,之前也有不少这样要求调查的来信,但都被我回绝了。这是祖母的遗言。不能让我的这种特质为外人所知,并且尽可能的隐藏它。如你所见,从以前开始只要我画出图形,即便那不是地上存在的生物,也会拥有生命。但是,创造出新的生命,并不是人类应该做的事。必然会招来八百万众神的愤怒,因此,祖母禁止我用左手画画。但是用右手画没问题,前一阵子手指受伤了,所以才。

ギンコ:なるほど、あれは惊异(きょうい)な造形物(ぞうけいぶつ)だった。/原来如此,真是令人惊叹的景象。

森罗:仆も惊(おどろ)いた、あんなものまで动(うご)かすとは。今までは散々妙なものが动かりしたりけど。/我也吓了一大跳,没想到会这样动起来,虽然迄今为止有很多这样的事情发生。

ギンコ:ええ、例(たとえ)えば。/呃,比如说呢。

森罗:小森伞(こもりかさ)とか、孙(まご)の手とか、あっ、调査はお断りします。/像树一样的伞,小孩子的手。啊,我拒绝调查。

ギンコ:チ。/哈。

森罗:でも、そのまますぐ帰(かえ)れとは言いませんが。こんな山奥(やまおく)まで入っては大変(たいへん)だたでしょう、今晩(こんばん)はゆっくりしててください。それに、実は人と会うのは久しぶりで世间话(せけんばなし)でも付(つ)き合(あ)ってほしいだよ。/但是也不会马上赶你走的。大老远赶到这种深山里来一定很辛苦吧,今晚就请在这里好好住下。而且我也很久没有和人交流了,也想和平常人一样和别人打交道。

森罗:どうぞ、仆がつけた果実酒(かじつしゅ)です。普段(ふだん)はここで一人やったんですけど。/请喝吧,这是我酿的果子酒,平时都是我一个人喝的。

ギンコ:ええ。こんな人気(ひとけ)のないところにひとりで住(す)んでいるのか?/诶,你一个人住在这种人际罕见的地方啊。

森罗:四年前(よねんまえ)に婆ちゃんが死(し)んでからは。婆ちゃんはこの家を出(で)てはいけないと言ったから。/自从四年前祖母去世后就是这样。祖母说我不能离开这里。

ギンコ:确(たし)かに、もしこいつが郷(さと)に住み、人前でうっかり何かを生(う)み出(だ)せてしまったなら、こんなふうに平穏(へいおん)にはいかしてもらえんだろう。その性质はあまりにじんちを离(はな)れてる。婆さんってのは、なかなか贤明(けんめい)な人だったみたいだなあ。/确实,要是住在村庄里在人们面前让什么东西动起来的话就不能过着这样平静的生活了吧。这种能力还是远离人的好。你祖母似乎是个很贤明的人。

森罗:うん、いつも仆のこと考えてくれてた、だけど。これ、见てくれる?/嗯,祖母一直都在为我的事情考虑,但是。请帮我看看这个好吗?

ギンコ:お前が描いたのか?/这是你画的?

森罗:うん、一人になると时时にこういうのが出てくるんだ。いつも一体(いったい)なんなんだろうと考えてた。仆はそれらをみて楽(たの)しくて写生(しゃせい)して婆ちゃんに见てたんだ。けど。嗯,我一个人的时候经常会看到这些。我一直在想它们到底是什么,我看到这些觉得很开心就画下来给祖母看,但是。

祖母:お前はなぜこんな梦(ゆめ)ばかり见ているのか?きっとあの恐(おそ)ろしい力(ちから)があるせいだ。この梦は忘(わす)れておしまい。恐れしい、恐れしい、哀(あわ)れな子(こ)。/你为什么老是会做这样的梦?一定是那可怕的力量的缘故。真可怕,真是太可怕了,可怜的孩子。

森罗:そ言うばかりで。仆の见ているもののことをなくなってるまでに信じてくれなかっ

た。だから、仆自身(じしん)ですら本当(ほんとう)は自分(じぶん)はどこか可笑(おか)しいか时々思ったりした。婆ちゃんと仆はそこだけは终(お)わりに会わなかった。/祖母总是这么说,至死也不相信我看到的东西。所以连我自己也在想我是不是很奇怪。祖母和我只有在这一点上是不一致的。

ギンコ:それらは、これ皆(みんな)虫だから。/这些是虫。

森罗:虫?/虫?

ギンコ:ああ、昆虫(こんちゅう)や爬虫类(はちゅうるい)とは一线(いっせん)を引(ひ)く虫だ。大雑把(おおざっぱ)にとこだ、こっちの四本(しほん)が动物(どうぶつ)で、亲指(おやゆび)が植物(しょくぶつ)だとすると人はここ、心臓(しんぞう)から一番(いちばん)远(とお)い中指(なかゆび)の先端(せんたん)にいるということになろう。手の内侧(うちがわ)に行くほど下等(かとう)なせいぶつになっていく、たどっていくと手首(てくび)のところで血管(けっかん)が一(ひと)つになってるだろう。/呃,是和昆虫类和爬虫类不一样的。粗略来讲,把这四个手指看成是动物,大拇指就是植物。那么人就是在这里——离心脏最远的中指的指尖这里。越往手心上去就越是低等的生物,但是到了手腕这里血管会交汇成一条吧。

森罗:うん。/嗯。

ギンコ:ここにいるにが菌类(きんるい)や微生物(びせいぶつ)だ。この辺(あた)りまで遡(さかのぼ)ると、动物と植物の区别(くべつ)をつけののも难(むずかし)しくなったくる。けど、まだまだ先にいるものだちがある、腕(うで)を遡(さかのぼ)り肩(かた)を通(とお)りすぎる、そして恐らく、ここら辺にいるものたちを「虫」或(ある)いは「绿物(みどりもの)」と呼(よ)ぶ、生命そのものに近(ちか)いものたちだ。

そのものに近いだけあって形や存在が暧昧(あいまい)で、それが见える性质とそうでないものに分かってくる。/在这里的是菌类和微生物。要是追溯到这里,动植物的区别也会变得难以分辨,但是这些面还是有很多各种各样的生物,手腕再往上走,越过肩膀,接着恐怕就是——居住在这里的生物或称之为【绿物】,是接近生命原体的东西。/离得远近,形状和样子就越模糊,可以分为看得见和看不见的两种。

森罗:うん、透(す)けてるものもいる。幽霊(ゆうれい)みたいに。/嗯,也有透明的,像幽灵一样。

ギンコ:いわゆる幽霊というやつの中にも正体(しょうたい)は虫だというものもある。人に拟态(ぎたい)できるものもいるからなあ。お前の婆さんにはそれらは见えなかっただろう。感覚(かんかく)をわか违(ちが)うのは难しい、相手(あいて)の触(ふ)れたこともない手触(てざわ)りを相手にそのまま伝(つた)えることできないように。见たこともないものとその世界はわか违うのさ。/所谓的幽灵中有些本体就是虫,因为他们具有模拟人的能力,你祖母看不见他们吧。要分享感觉是很困难的,对方没有接触过的感觉就不可能传给对方知道,对于没有亲眼见过的人来说是很难了解那个世界的。

森罗:でも婆ちゃん、仆はその可笑しいものたちは世界にいるとはうれしくてたまらないだよ。/但是祖母,我对于这些奇怪的东西存在于世上感到非常开心

ギンコ:泡(あわ)やはと。しかし、ただ広し家だなあ、外古(そとふる)いし。こんな

とこよく一人で。いまなんか横切(よこぎ)ったなあ、まあ、こんな家に虫がいないわけがないが。どこへ?/厕所在哪?这房子真大,外表看起来又很残旧,他居然一个人在这里住了那么久。刚才好像有什么飞过,也对,这房子里不可能没有虫吧。去哪了?

廉子:ええ、虫ぴんだ。そいつで虫を串刺(くしざ)しにして饰(かざ)るのか?卑(いや)しい虫师め。是虫针啊,想用它刺穿虫子当装饰吗?卑劣的虫师。

ギンコ:卑しい?虫の言われたがねえよ。/卑劣?我可不想被虫这么说。

廉子:なんだ、こいつ。烟(けむり)のくせに。/这是什么?明明只是烟雾。

ギンコ:虫だよ、お前と同じ、かわいいやつだろう、同胞(どうほう)には待ちついた离れない。すぐ解(と)けるだなあ。おお、半がけが绮丽(きれい)(いろ)なさかずきだなあ。お前もこれで月见酒(つきみさけ)でもしてたかな。/是跟你一样的虫,很可怜吧,被自己的同类束缚,马上就替你解开吧。哦,缺了一半,颜很特别的酒盏。你也喜欢在月下品酒吗?

廉子:うるさい、返(かえ)せ。ずうずうしくて人の家に図(はか)りこみて、どっとと出て行け。/吵死了,还给我!厚颜无耻的走进别人家里,快点给我滚出去。

ギンコ:虫のくせに伟(えら)そうなやつだな。人の家ってお前の家かよ。/虫里面也有这样嚣张的家伙呢,你说别人家,这是你家吗?

廉子:ああ、そうだ。/啊,没错。

ギン子:なるほど、そういうことか。お前はもともと人だったのが虫の性质をもった宅(たく)いもままだろう、虫として不完全だからそんなに弱(よわ)いんだなあ。绿の半がけの杯(さかずき)、これでお前がそうなったのは见当(みとう)はつく。お前は谁かってことがな、お前の名は廉子だ。ここへ来る前に森罗のことは调べさせてもらったなあ。俺にこの杯をもとに戻(もど)る案があります、聴(き)いて见るか?廉子婆さん。/啊,原来如此,原来是这样,你本来是人,后来却得到了虫的力量,作为虫来说并不是完全体,所以才那么弱。缺了一半的绿酒盏,你为什么会那么在意它?你到底是谁?你的名字是廉子吧。来此之前我调查过森罗的事情,我有办法把这酒盏恢复成原状,要我帮忙吗,廉子奶奶。

森罗:婆ちゃんがまだこの家にいる?/祖母还在这个家里?

ギンコ:といっても、无论(むろん)人としてはないから。人と虫の中间(ちゅうかん)としてだ。/虽然这么说,当然不是以人的身份而是半人半虫的状态。

森罗:どういうこと?/到底是怎么回事?

ギンコ:虫の宴(うたげ)という现象(げんしょう)がある。时に虫が人に拟态し宴に客(きゃく)を招(まね)くってもんだ。そこでは杯を手を出される、そして津(つ)ばれた酒を饮み干(ほ)すと生物としての法则(ほうそく)を失(うしな)う。つまり、虫のあちらの世界の住人(じゅうにん)となる。/有所谓的虫宴现象,有时虫会化成人形,设宴款待客人。那时要是接过虫的酒盏并将其中的酒喝掉的话就会脱离生物的法则,也就是说会成为虫在那个世界的寄生体。

森罗:婆ちゃんがそれに?/祖母喝了酒?

ギンコ:ああ、しかし宴は途中(とちゅう)で中断(ちゅうだん)された、おかげで、お前の婆さんは虫にならずに済(す)んだ。家に戻った婆さんはもう以前の婆さんでなくなったきた。半分はあちら侧においてきてしまったんだ。森罗、お前の知ってる婆さんは半分でしかなかっただよ。けど、そのもう半分も同じようにお前が生まれた日はらずっと家のなかで守(まも)った。/对,但宴会似乎中途中断了,亦因为如此,你祖母才没有变成

虫,但是回到这房子的祖母已经不是以前的祖母了。她的一半已经去了那里。森罗,你所熟悉的祖母,只是她的一半而已。而那一半也一样从你出生起就在这房子守护着你。

森罗:そんな、全然気(き)づかなかった。/怎么会这样,我完全没有发觉。

ギンコ:彼女(かのじょ)は完全の虫ではないから、お前には见えないのだ。だが、お前の力を使えば婆さんは完全の虫のすることになる。そうすれば决してもうこちら侧の戻ることはできないが。/因为她不是完全的虫,所以你是看不到的。但是要是使用你的能力的话,祖母就能变成完全的虫,这样做的话,她也就再也回不到这里了。

ギンコ:どうする?/你要怎么办?

廉子:本当か?本当にそうすれば森罗に会うことができるのか?/真的吗?真的那样做的话就能够再见到森罗吗?

ギンコ:婆さんの迷(まよ)いはそう长くはないよ。力(ちから)を贷(か)してやれるか、森罗?/你祖母不会在迷惘中徘徊这么久,能借助你的力量吗?森罗。

森罗:描くこと见ちゃ駄目(だめ)だよ。/不能看我画哦。

ギンコ:分かったって。じゃ、森罗、さっきした婆さんの话の宴の中で婆さんが虫にもらった杯を左手で描いてみてくれ。/我知道啦,那么,森罗,把刚才说的你祖母的故事里从虫那里接过的那个酒盏用左手画出来吧。

森罗:えっ、でも、どんなとか形とか闻いてねえよ。/呃,但是你没有告诉我颜和形状啊。

ギンコ:いいんだ、それで。想像で描いてみてくれ。/没关系的,用你的想像去画吧。

森罗:想像(そうぞう)。/想像。

ギンコ:描けるはずだ。婆さんがうけた杯の半分は心まごえたと体内に受け継がれたといくものだから。见るなって言われたがみるわけにはいかんだろう、やっぱり。应该能画出来的。因为你祖母接过的酒盏的另一半就在你心里。虽然答应说不看,但真的没道理不看啊。

森罗:绿のような気がする、この国の绿のような浓(こ)くて鲜やかな、それで平(ひら)たくて丸(まる)い形。/感觉是绿的,和这个国家的颜一样,非常艳丽,而且又扁又平,圆形的。

ギンコ:おめでとう。すげい。/正解!好厉害啊。

森罗:あっ、割れる。/啊,裂开来了。

ギンコ:廉子。/廉子。

森罗:そこにいるの、婆ちゃん。/奶奶在那里吗?

ギンコ:合わせるぞ。/合上。

森罗:なんだ、これ。/这是什么?

ギンコ:さあ、饮んで见よう、廉子。/来,喝吧,廉子。

森罗:婆ちゃん?/祖母?

ギンコ:何てれてんだよ、お前ら。/你们在害羞什么啊?

森罗:いや、だって思ってたより若かったつが。/因为她比我想象中的还要年轻。

ギンコ:ほら、お前もいっとけ、祝(いわ)いの酒だ。/给,你也喝一口,是庆祝的酒。

森罗:うん、これは、婆ちゃんの记忆だ。/啊,这是祖母的记忆。

廉子:急(いそ)がないと日が落(お)ちるんだ。虫?列(れつ)からてられない。/不快点的话天就黑了。虫?不要掉队。

虫:さあ、饮みなさい。いおろい廉子と、これはそなたのための宴なんだ。/来,喝吧。五百藏廉子,这是为你而设的宴。

廉子:なんでかくわしい?一口饮むほどにものを考える力を失(うしな)わせる。/什么在呼唤我,每喝一口,我的意识就会随之流失。

虫:お気にめされば饮もう。それは光酒(こうき)という生き物。普段は深の暗(やみ)のそこで、巨大(きょだい)な光脉(こうみゃく)に作(つく)りおよい回(まわ)っておるものだ。それを吸湿(きゅうしつ)するものはこの杯、特别にそなたのために作ったものだ。それはこの世界に生命が生まれたときから现(あらわ)れてそれは近づいたときはくさをおぎ命芽吹(めぶ)き远(とお)さがれはごぱつする。つまり命の水。この世にこれよりうまいものない。杯を交(か)わし最高(さいこう0のもてなしをしたのは頼(たの)みたいことがあるだが。これより三十一年にこの世に诞生する、そなたの孙は生物世界を変えること特异(とくい)の性质を持って生まれてくる。そなたには将来その目つきをしてほしいのだ。/尽情的喝吧,这是叫做光酒的生物,平时是在黑暗深处,栖息于巨大的光脉中的生物,能从深邃大地中把它们呼唤出来的只有这酒盏,是特别为你而造的。它们是在这世界,自生命起时就存在于世,土地因它们而生机勃勃也因它们而贫瘠干涸,这就是生命之水,在这世上没有比他们更珍贵的东西。我们赠与你这酒盏,并盛情款待你同时有一事相求,三十一年后将会在这世上出生,你的孙子,他拥有改变生物世界的奇异能力,我们希望你能守护他防止他滥用这种能力。

廉子:私の孙?/我的孙子?

虫:それがその子供とこの世界にとって幸福(こうふく)なことになるんだ。それを望(のぞ)まれるならそなたに力を与(あた)えよう、さあ、残(のこ)りのお酒をすべて饮み押(お)さえよう。/这样对这孩子对这世界来说都是一种幸福,你也希望那样的话,我们就赐予你能力,来,把剩下的酒全喝光吧。

廉子:乾(かわ)いてる。帰らなきゃ。/干了。该回去了。

廉子:森罗?/森罗?

森罗:あれ、どうしたんだろう、仆。/阿肋,我这是怎么了?

ギンコ:森罗の涙(なみだ)は止(と)まらなかった、廉子の感情感覚(かんじょうかんかく)が粒(つぶ)さ流(なが)れこんだという。ただ、ただ、杯割れてしまったのは悲(かな)しくて仕方(しかた)なかったという。そして、それを感応(かんのう)するように光酒も杯から気続きだ。止め処なく流れ続きだ。/森罗的泪水怎么也止不住,廉子的感情已经融入他的心中。但是,但是酒盏破裂时多么悲伤和无奈。还有为了感应到这些,光酒继续从就酒盏中溢出,没有停止,一直流淌着。

廉子:もう行くのか?/你要走了吗?

ギンコ:すごいなあ、一面の苔(こけ)だ。/苔藓长得很茂盛啊。

廉子:ああ、昨晩光酒が染み込んだ一帯だな。森罗の调査とはあきらめるのか?/昨晚光酒洒在这一带了吧。你不调查森罗的事情了吗?

ギンコ:そうな、面倒(めんどう)なお目つきやグが复活(ふっかつ)しまったからなあ。/因为麻烦的监护人又复活了。

廉子:调査抜きなら近くへきたときよりよい。仕方がないとは言えこんなところに森罗が一人では寂(さび)しかれ。/如果不是为了调查来附近的话随时欢迎。虽然没有办法,但是森罗一个人生活在这里会很寂寞的。

ギンコ:别にその必要はないじゃないか。これからはいつでもあんたがそばにいるから。/不是没有那个必要了吗?因为从现在起,你会一直待在他身边。

森罗:あれ、ギンコは?/银古呢?

廉子:もう行ったぞ。/已经走了。

森罗:なんだよ、挨拶(あいさつ)もなしに。/什么啊,走都不打声招呼。

廉子:こっちもたいした礼もないしわるかったなあ。不过,我们不是也很失礼吗

森罗:いや、でも、绿の杯がないけどね。/不,但是绿酒盏不见了。

ギンコ:それ以后、神の左手を持つ少年についての新しい噂(うわさ)はふっつりととぎれた。/从此之后有关拥有神之左手的少年的传闻再也没有出现过。

虫师第四集

枕小路

ジン:虫师?

ギンコ:ギンコと申します。予知梦(よちむ)ご覧になったそうですね。巷(ちまた)で评判ですよ。ですが、その梦はちょっと问题があるんじゃないかと思っていますね。

ジン:どういうことだ?

ギンコ:恐らく、虫が络んでいますなあ。梦の中に住み虫です。そいつが予知梦见せるんですよ、そしてどんどん増殖(ぞうしょく)する。この薬で数をちょうすうしたほうがいい。いまはどれくらいの割合で予知もん?

ジン:十の一、二つ。

ギンコ:次期に四、五回になる。

ギンコ:そしたらこれを饮むといい。それ以上饮めば毒となります。だが、ほっとけば梦から覚めないなっちまう。大切なのは均衡です、必ず饮んでくださいよ。なくなるごろ、またきます。どうぞ、それまで、よい梦を。

ヌイ:寝言と会话してはいけない、それは彼岸(ひがん)の国の言叶。

ギンコ:あれから一年と経っていないはずなんだが、これは一体どういうわけか?

ジン:来たか、虫师。待ってたよ、お前に闻きたいことがあってなあ。

ギンコ:あんた一人か?この町の有様、もしかして。

ジン:ああ、そうだ。闻かせてやれよ、全部なあ。

ジン:すごいぞ。これは水脉だ。これで田を広けられるなあ。

男:おい、出たぞ、またジンの梦が当たったぞ。町に知らせて来い。

きぬ:农家の方がお礼にってこんなに、なんか悪いわね。

ジン:ああ、なかなかいいもん食わしてやれかな、ありがたいよ。

まゆ:ああ、山桃。

きぬ:でも、ジン。予知もんの回数が増えている。あの虫师の言っていた通りね。

ジン:おまえ、信じてるのかい?虫が梦を见せているとか。

きぬ:分からないわ、でも、もしも、もしもそれが本当だったら。

ジン:分かったよ、あの薬は饮んでおく。

きぬ:そう、よかった。

男:ありがとうございました。もし予言がなかったら、いまごろは。

女:本当になんとお礼を言ったよいか。

ジン:きぬ、俺は时々おそろしくんだよ。梦に见たままが真になると、まるで俺がしてかしたことのように思えるんだ。

きぬ:そんな。

男:ジンさん、これ、この间のお礼だ。取っていてくれ。

男:わし等にもいい梦をみてくれよ。

ジン:さあ、それはちょっと。

男:无理言うだよ、梦だもんな。じゃ、またきたしてるよ。

ジン:どうも。

きぬ:大丈夫よ、ジン。きっとあなたは皆を救うために予言を授(さず)かっているのよ。

だって皆、あなたのあかげで幸せそうじゃない。恐れることなんでないわ。

ジン:ああ、そうだなあ。妻にはそういったが、俺に予知梦への恐れは消えず、进んで薬を饮むようになった。だが。

男:津波だ!

きぬ:まゆが、あのこが浜に。

ジン:そんな、こんな梦は一度も。

男:まったく、こんな大灾害なぜ予知なかったんだ。

きぬ:まゆ。

ジン:この薬を饮んだばかりだ、だからまゆの命を救えなかった。俺は薬を饮むのは止めた、すると、忽ち予知梦の回数が増え、内容もより正确になった。

きぬ:见て、ジン。家の前にお礼の品が。元気出さなくてはね。

ジン:そんなある日だった。

きぬ:梦を见たの?ひどい汗。悪い梦?

ジン:いいや、体调が悪いだけだ。梦じゃない。

ジン:そして翌日。

ジン:きぬ。

ジン:梦に见た病そのものだった、指先から青いカビが入って全身に広がり泥のように崩れて、そして、俺一人が町に残された。ギンコと言ったなあ、その梦が真のことになったとき、俺は気がづいた。あのときお前が俺を骗したてことになったなあ。俺の中にいるのは予知梦を见せる虫なんかじゃない、俺の见た梦を现世に持ち出しでんせんさせる虫なんだよ。あの青い病、俺の近くにいるものから感染していた。妻、隣家、向かいのすじん。そして眼前に梦と同じ光景が作られた。俺がこれまで、予言してきたことはすべて俺の梦がつくり出したことだったんだ。そうだろう?なのに、なぜあんな嘘をついた?

ギンコ:この虫は完全に绝つことはできないだから。寄生されたが最后、生涯均衡た持ち共生しかないんだ。だが、虫本来の性质を告げれば、宿主は自分の作り出すものの大きさに耐えれなくなる。

ジン:そう、そしてしねばよかったんだよ。こんなわざもとが。なぜ生かしたおいた?なぜ?

ギンコ:わるかった。こんなっちまって以上、虫を绝つすべをなんとしてもつけてみせる。生きてくれ。

ギンコ:梦野间。宿主の梦の中で住むだが、时は梦から出てくることもある。そしてそのとき、宿主が见ていた梦を现(うつつ)にでんせんさせる媒介となるんだ。つまり、すべての梦が予知梦にするわけじゃないが。増殖するほど、梦から出てくる数も増えてゆく。そして再现できる规模や范囲も大きくなってしまう。だが、虫自体は日に晒(さら)されれば消える、弱弱しいものだ。それらなぜ现世出てきたわるかわからない。だが、どこかに梦を现にを结ぶ虫たちだけの通い道があり、宿主が目覚めた间に虫たちがそこに眠ってという。それを见つけられれば、なんとかできるかもしれない。しかし、これほどの速さと规模は见闻きしたことない、あの薬では食い止められん。かっといって、服用を増やせば。うん?おい!薬全部饮んだのか?しっかりしろ!ぎどくざいを。

ジン:かまうな。もういい。たってもいきられん。

ギンコ:眼球が动き出した、梦を见始めたんだ。

ジン:许してくれ。

ギンコ:寝言?お前に罪などないさ。虫にも罪などない。互いにただその生を遂行してだけだ。だれにも罪などないんだ。死なんじゃない、お前はなにもまちっがじゃいない。

ジン:あれは雁(かり)か?

ギンコ:やっぱり寝言か?脉络がない、お前一体どこにいるんだ、速いところに戻って来いなあ。

ジン:苇の原にいる。

ギンコ:返事をした。うん、なんだ、この耳鸣り。これは一体。いまの通いでこいつの梦と现世がつながった。これが仮に见えてるんが、これは全部梦野间のれだ。

まゆ:お父ちゃん、お帰り。

ジン:まゆ。

きぬ:お帰りなさい。

ジン:きぬ。すまない、すまない、お前たち。みくんてだろう、俺が、お前たち、皆を杀してしまったんだ。

きぬ:いいのよ、ジン。あなたのせいじゃないわ、あなたはわるくないわ。

ジン:谁かいるのか?俺だ。屏风(びょうぶ)に何かを映っている。火。

ジン:热い、谁か。

ジン:映っているのは俺の梦か?枕から梦が燃え打つんだ。

ギンコ:そっか。こっちも。起きろ!水を。

ジン:梦は枕を通ってやってきた。

ギンコ:虫たちだけの通い路。目覚めているときそこに虫たちが眠れているという。

ジン:まっさかこんなところでいたのか。

ギンコ:止めろ!

ジン:な、なぜ、俺まで。

医者:応急処置がよかったようだなあ。なんとか助かりだろう。

ジン:こうなるのは分かってたのか?枕を切っただけなのに。

ギンコ:知ってるか?「枕」の语源は「魂の仓」、「玉の仓」だって说がある。生きているうち、三割近くは头は预けている场所だ。そこに魂宿ると考えがいたんだろう。そしてそこは梦野间の巣であり。梦と现の通路とあっていた。切ればなにか失うものはお前だろうと思った。

ヌイ:梦と现のあわいになるは魂の仓。谁もこの道を通らねば彼岸の国は见てこれん。

ギンコ:その后、男は再びとびしを始めたと言う。腕は确かで评判を呼んだ。しかしなぜか次第に心病んでいたという。时に大来で刀を振り回し、最后は自らにらいばをつきたてた。人々は言った、あの男は眠るはとても恐れていた。眠ると魂がどんとどこかへ滑り落ちてゆくのだそうだ。男は枕を绝ったというあの日から、一度も梦を见なかったと言う。

虫师第五集

旅をする沼

先生:静寂を食う虫「阿」に寄生された时できる角か?なるほど、これは珍しい。で、そっちは?/是被吞噬寂静的虫「阿」寄生后长出来的角啊。原来如此。这个可真少见。那个呢?

ギンコ:「神の左手を持つ少年」の描いた杯。/是拥有「神之笔」的少年所绘的酒盏。

先生:何?あの人物は虫师嫌いなのは有名だぞ。美しく嘘をつけな、ギンコ。/什么。那个人可是出了名的讨厌虫师,你说谎也该说得更真一点。银古。

ギンコ:いやいや、无理に売るつもりはないんだ、あだし野先生。こいつはただの収集家

にはもったいない素もので。/我可没打算强卖。化野医生。这东西给单纯的收藏家可说是有些浪费了

先生:まあ、よく见せる。/算了。让我好好看看。

ギンコ:売ってもいいが、ちょっと协力ほしい话なんだよ。ここへ来る途中妙なものに会ってなあ。それを捕获したい。/我也可以卖给你。但有事需要你帮忙。我在来这里的路上遇见了奇怪的东西。我想捉它。

先生:妙なもの?/奇怪的东西?

ギンコ:ああ、闻いたことないか?液状の虫のその成れの果て「生き沼」だ。/恩。你没听说过吗。液体状态的虫所变化的结果,是活着的沼泽

ギンコ:この山脉を越える间、よく沼を见た。/穿越那山脉的时候。总看见沼泽。

ギンコ:また沼だ。/又是沼泽。

ギンコ:しかし、うかえうしのちのち山腹から见返ると、决まって沼は迹方もなく消えているのだ。そして、また一つ山を越えたごろに次から沼は姿を现す。狐狸にでもばかされてのかい?お前、この前の沼にみたいなあ。この山はどこか抜け道あるのか?/但是,绕了一段路后从山腰往回看,原来的沼泽踪影全无。而且穿越另一座山的时候,又出现下一个沼泽。难道是狐狸什么变的吗?你,原来在前面那个沼泽里的。这座山有什么近路吗。

ギンコ:一瞬、目を疑った。その髪の异様なおおさだ。沼の水で芯まで染めたようだ。/一瞬间。我的眼睛被她头发的那种异样的绿吸引住了。宛如是被沼泽的水连发芯都染绿的一样。

いお:あのう、そのまま行くと、なにかあるの?/请问,就这么走下去的话,是什么地方?

ギンコ:じゃ、俺もちょっと闻きたいんだ、いいかな。この沼、普通の沼じゃないよなあ。/那我也有问题要问你,这沼泽不是普通的沼泽吧。

いお:この沼は旅をしているの何度も千路上もうったり浮いたりしながら、あなたと同じようにこの山を越えようとしたいみた。/这个沼泽在旅行。它一边不断地潜入地底再浮上来,一边和你一样穿越这座山。

ギンコ:おお、こりゃすごい。生き沼か。で、あんたも一绪に移动してるわけ、なんでまた?まあ、ともかく、このまままっすぐいけば海にでる。俺が目指しているのがそこの渔师(りょうし)町。海にでたらもう沼にはついていけねんなあ。ところでさ、沼の水明日の朝ちょっと调べたいだが。/哦。这真厉害。活着的沼泽啊。那就是说你也是和它一起移动到这里的。那这又是怎么回事。算了。反正这样一直前行就出海了。我的目标是那里的渔村,要出海的话就不能再跟着沼泽了。顺便。明天早上想调查一下这沼泽的水。

いお:どうぞ。/请便。

ギンコ:なんせ暗くて。新しょぽいなあ。/可是现在太暗了。像是新品种。

いお:沼が旅をしてるなんて信じてもらえないかと思った。/我还以为你不会信沼泽会旅行什么的呢

ギンコ:ああ、仕事だから、大概の现象は受け入れるさ。/因为工作性质的关系,我很容易接受任何现象。

いお:仕事?/工作?

ギンコ:虫师という、虫の起こす现象というのはどれも奇妙だなあ。例えば、「水子」でやつって、液状の虫。なんでもいるんだが、无で透明の液体が生きている。古い水脉の水に好んで住み、池や井戸にとどまることもある。水と误り水子を饮み続けると、常に水を触れていないと呼吸をできなくなり、体が透け始まる、それをほっとおくと、液状がし流れ出してしまう。そしてどうの虫はあるとき、突然消灭している。そういうのがいるくらいだからが、まあ、沼が自分で动くのもありかなと思えってくるのさ。そいうあんたこ

そ、気味悪いとは思わなかったのか?/我是虫师,涉及的全是虫所引起的现象。这些现象都很奇妙。比如说「水蛊」。那是液体状的虫。它们虽然是无透明的液体。却是活着的。喜欢栖息在古老的水脉里,也会停留在池塘或井里。如果把水蛊误认为水而不断喝下去的话,就会渐渐变得不常接触水就无法呼吸。身体也会开始变得透明。如果放着不管的话,身体就会变成液体流出来。而且那虫在某时突然灭绝了。虽然如此,总该有留下来的。所以也可以想象沼泽也有能自己移动。话说回来,你不会感到害怕吗。

いお:私は恐ろしいと思ったことはないわ。初めて见た姿があまりに力强くてこぼしかったから。/对我来说,已经没有让我感到可怕的事了。因为我初次看它的样子,力量强大无比而神圣庄严。

ギンコ:力强い?どんな姿だ?/力量强大。那是什么样的。

いお:泳いでいたの、増水して荒れ来る川の底。私は流れの饮み込んで浮き上がることもできずにいた。そこへ、绿の巨大なものが、激流の底悠然と遡ってきた。気がつくと山间の沼のふちだった。/在我游的因洪灾而变得波涛汹涌的河底。那时我被水流所吞噬根本无法浮上来。在那里,有个巨大的绿的东西,它在急流底悠然地逆流而来。等我醒来的时候已在山间的「沼渊」里了。

いお:この、私が気づいた。この沼はいま沼のふりをしているがあのときの绿のものだと。そのときには、もうこのに染まっていたの。多分、もう私は一度死んでいるのよ。でも、この沼が「生きていていい」と言ってくれた。だから、私にとって、この沼は唯一の居场所なの。/这颜是。我注意到了。这个沼泽虽然现在看起来是沼泽,但它就是当时那个绿的东西。那时候我已经被染上这个颜了。我大概已经死过一次了,但这个沼泽对我说要活下去。所以对我来说。这沼泽是我唯一可寄身之地。

母:せめて、これで着てお行き。水神様の嫁になるのだとほぼておくれ。/至少穿着这个走,你要成为水神的新娘了。

村长:母亲のおことは皆で助けてくれて心配済むでいい。お前の名はかたぬれであろう。

水だから村を救ったこまれたかき娘として。/大家会照顾你母亲,你不必挂念。你的名字将会流芳百世,你是从大水灾中拯救村子的高尚的少女。

いお:饮み続けると体が透明に。やがて流れた水。行くのね。/一直喝的话。身体会变透明。最后变成水。要走了。

ギンコ:地下に潜ってくる。おい、もう行くのか、ちょっと待たせろ。调べて。/潜入地下了。喂,要走了吗,等等。我还要调查。

いお:いろいろ教えてくれてありがとう。私、この沼の一部になる。/谢谢你告诉我这么多,我已经。是这个沼泽的一部分了。

ギンコ:待って!おい!消えた。くそ、なんできづかなかった。あれは水子の成れの果てだった。すいこ井戸から消えて以后、自ら移动いていたんだ。/喂!等等。消失了。可恶,我居然没有注意到。那是水蛊所变化的结果,水蛊从井里消失之后。它们本身一直在移动。

いお:私、この沼の一部になるの。/我已经。是这个沼泽的一部分了。

ギンコ:马鹿な。それがどういうことか分かってんのか?/你知道那意味着什么吗。

いお:生きていていいといてくれた。/它对我说要活下去。

ギンコ:お前、生きていたかったんだろう。/你,想活下去吧。

ギンコ:沼は海へ向ってるだったなあ。/沼泽向海里去了。

先生:海へ向う沼か?/往海里去的沼泽吗。

ギンコ:なんか知ってるのか?/你是不是知道什么。

先生:古い渔师から闻いたことがある。なんでも鲸以上もありそうな绿のものが川奥だってきて海へ入るとまるで分解されるように死んでしまうってことがあるそうだ。実际、见

たことがないそうだが、まるで死に场所を求めるように海へ来るんだと。ともかく、急おうか。渔师たち騒いでない所を见るとまだ海へは出てないようだ。/以前听老渔民说过。甚至比鲸鱼还大的绿的东西顺流而下来到这里,它一旦进入海里就宛如被分解了一样而死。虽然没有亲眼见过,但就好象为寻求自己的死亡之处而来到海里一样。反正要赶快,从渔民们还没有骚动的情形来看,好象还没入海。

先生:当たった。これがこの辺りの地下水脉の地図。じんぴんだぜ。振り子で水脉の反応を调べて作ったのらしい。/有了有了。这是这附近的地下水脉地图,这可是珍品啊。像是根据用测频仪测出的「水脉波」反应画出来的。

ギンコ:确かなんだ。/好像是的。

先生:试しに井戸に降ったらごぐでところだが。/实验挖井的话,大概在五分左右的地方。

ギンコ:沼と见た场所とこの水脉一致するの。やばり水子は地下水脉に移动するのか。でも、ここで枝はしてる。これじゃ进路は予测できるな。/我看到沼泽的地方和这个水脉一致,果然水蛊在地下水脉内移动。但是在这里产生分流了,这样一来就无法预测它前进的路径了。

先生:なあ、ギンコ。こいう地図もあるぞ。数万年前の川の予想地図。そこの川も河口の位置こそ同じだが、昔はずいぶん他所に流れてる、面白いぞ。/呐,银古。我还有这种地图,是几万年前河流的假想图。那上面的河口位置也一样。但看来以前的流径范围要向外超出许多,很有意思吧。

ギンコ:あのな、いまお前の収集物自慢を闻いてる暇は。见せてくれ。/现在我可没空听你谈你引以为傲的收藏。让我看看。

先生:重(かさ)なった。どういうことだ?/重叠了。这是怎么回事。

ギンコ:この水脉はもともと川だった。川が川でなくなり千路に埋めたら小石の层になって残ることが多い。雨水はそういた层に向って浸透してゆく。かつて川だった场所は千路に埋めれても地下水の通い川となるんだ。あの沼はかつて残った川の记忆していて辿っているのかもしれん。/这条水脉原本是河。河被埋入地下变成石子层的事也经常发生。雨水就向那样的层面里渗透。这样曾经是河的地方就算被埋入地里,也能变成地下水通过的河流。那沼泽可能有以前那条河的记忆而往那里去。

先生:死に场所を定(さだ)めってのか、まるで鲑(さけ)香鱼(あゆ)だなあ。/决定死亡之处吗,就像鲑鱼和鲇鱼一样。

ギンコ:ともかくいずれこの河口へやってくるはず。海へでちまったら手が出せない。あたしの、人を集めてくれないか?河口付近に网を张る。/它总会往这个河口来的,一旦到了海里就鞭长莫及了。能帮我叫点人过来吗,要在河口拉网。

皆:よーし。引っ张れ。/好了,拉紧。

先生:わるいなあ、こんなに大势、よかったのか?/不好意思。这么兴师动众,不要紧吗。

男:何、渔师はいまみんな暇こいてのさ。このごろの海に来たら死んで见たいに鱼がいない。/说什么哪,反正现在大家都很闲,这个时候就算到了海里,也是连条死鱼也没有。

男:まあ、それにあだじの先生にの頼みだしなあ。/而且还是化野医生开口拜托的。

ギンコ:医者ってのは役得だなあ。/所谓医生果然是会有额外的好处啊。

先生:いやいや、人徳いたいだね。しかし、ギンコ。この网にまだ娘がひかかれ状态かどうかわからないだろう。/不对不对,这是人品问题。但是,银古。还不知道这网能不能拦住那姑娘。

ギンコ:ああ、だが、それに赌けるしかたがないだろう。/但是也只有一赌了。

先生:いや、なんでそうまで助けたい?无论、お前に自责でもあるだろうが。娘がなんとしても行きたいと言ってたのなら分かる。だが、娘がもう沼の一部のなること望んでいた

だろう。そのほうが本人にとって幸せって事情もこのようになる。こくなようだが。/你为什么那么想救她?当然你也有自责的部分。我知道那女孩无论如何都想活下来,但是她不是已经想成为沼泽的一部分了吗?这样对她来说或许比较幸福。世上也常有这种事,真是残酷。

ギンコ:例の杯だが。/那个绿酒盏。

先生:あっ。/?

ギンコ:荒れはもともと普段の少年の祖母のものだが、虫でも人でもなくなっていた彼女は少年の目に映るためには、虫から授かったというあの杯を复建しかなかった。そうすれば决して人には戻れなくなるが、俺は彼女の希望の基に虫にしたんだ。だが、本当にそうしてよかったのかわからない。虫の侧へ行くということは普通に死ぬことは违う。虫とは、生と死の间にあるものだ。人を指すもののようで物质(ぶっしつ)を指すもののようでもある。死にながら生きているようなもの、それは一度きぎ瞬间の死より想像ぜする修罗だとはおもわんのか?すこしずつ人の心は摩灭されるそんなところへ行こうというのに、あいつは最后に见たとき、大事そうに晴れ着を着ていた、それ以上にごくで事情はそうあれもじゃないだろう。/那原本是我说的少年的祖母的东西。变得不是虫也不是人的她,为了能让那少年看到自己,就只有恢复虫授予她的那个酒盏。虽然这么做的话就必定无法成为人了,我还是她所愿,帮她变成了虫。但是,我不知道那样做是否真的对。选择了做虫与普通的死不一样。虫是存在于生死之间的「东西」,既可以说是「人」又可以说是「物质」。是死亡的同时又活着的「东西」。比起那只有一次的【死亡瞬间】来说,是难以想象的痛苦的修罗之道。虽然她的意识一点点消失,还说要去那里。但我最后见到她的时候,她还盛装打扮,没有比那再残酷的事了吧。

女:なにも来ないね。いま、なにか音。/啥都没有,刚才,那是什么?

男:来たぞ。/来了。

男:なんだこりゃ。/这是啥啊?

男:势い杀せ。/一口气杀了它。

ギンコ:打つな、中に人がいる。/不要,里面有人!

男:すり抜けしまったの。/穿过去了。

男:人がいるぞ、赤い着物。/里面有人,穿着红的和服。

ギンコ:もう手遅れだったのか。/已经为时已晚了吗?

男:おい、どうなっての、この大。/怎么有这么大一啊。

男:こっちも。/这里也是。

男:なんだこりゃ。/这是啥啊!

先生:ギンコ、娘が见つかった、生きている。ただし、「かんてん状」だったそうだ。/银古,发现那姑娘了,还活着。只是好象变成「凝脂状」了。

男:先生、娘がどうなったかい?/医生,那女孩怎么样了?

先生:海水であの绿のやつの成分は抜けたみたいだなあ。うん、いま白玉状くらいかね。/海水好象把那绿的成分抽掉了。现在变成白玉状了。

女:あの绿のやつの尸骸へ食いに鱼が集まってきてんだ。/鱼都聚集过来吃那绿东西的残骸了。

男の子:冲は鱼真っ黒だ。/海面全是鱼。都变得黑乎乎一片了。

女:あの娘はよいものを连れてきた。/那姑娘给我们带来了好收成。

ギンコ:おい、闻こえるか?/喂,听得见吗?

いお:海へでたら沼が死んでゆくのが分かって。自分が沼に解けて行くのすごく怖かった。けど、沼が死んでゆくのが悲しかった。/出了海我才知道,沼泽,沼泽会死。我在沼泽里

溶解,好可怕,非常害怕。但是,沼泽会死,好悲伤。

ギンコ:あれは数万年は活きている。お前はその最后の旅にとうこうしたわけか。会えてよかったなあ。/它已经存在了数万年,是你陪它走完了最后的旅程。能遇见它真好。

先生:やあ、いお。/小庵。

いお:あだしの先生。/化野医生。

先生:おお、今日も大量だなあ。/今天的收成也很不错啊。

いお:ええ、远方(えんぽう)の鱼も集まってきてるんです。沼の尸骸を食べてこんなに大きく。/恩,远方的鱼都聚集过来了,沼泽的尸骸把它们喂得那么壮实。

先生:髪、すっかり黒くなったなあ。/头发,变黑了呢。

いお:ええ、だからもう水の中で息はできないだけど。もう、それでいいの。沼の死んだこの海で自分の力で活きていきたい。/嗯,已经不能再水中呼吸了。但是,已经没关系了。我想在这片沼泽死去的海边靠自己的力量活下去。

ギンコ:また沼だ。一二三四。浮上しながら进んでたのは子孙を残すためだったんだなあ。/又是沼泽。一二三四。一边上浮一边前进,是为了留下子孙吧。

ヌイ:沼は生まれやがて淀(よど)にその懐に筑き続けた宇宙の秀栄には自らの足を持ち、动き始める。/沼泽诞生,然后沉淀。其自身孕育出的天地到了灭亡之时会到代为移动的双足,开始漂移。

虫师第六集

露くを吸う

ヌイ:今日も日が升り、また沈む。朝咲く花が首から落ちる。今日も日が沈み、また升る。辺り一面花が咲く。けれど、昨日とは别の花。

ギンコ:おい、まだつかねえのか?

凪(なぎ):もうじきですよ。あのう、医者の先生が绍介してくれたってことはあなたもそうなんですよね。

ギンコ:いいや、虫师でんだ。露骨に不安ごろなのよ。话を闻いて感じじゃ、确かに俺の范畴だや。

凪:ごめんなさい。初めて闻いたもんから。あっ、见えました。

(记忆再生)

凪:あこや、知ってるか?海の向うにいけば広くてきれいな土があってみんな幸せに暮らしてるんだ。いつか行こうよ、连れててやれよ。だからそんな颜してるなよ。

あこや:うん。

凪:そうそう。

ギンコ:なあ、なんで岛がとまり见てんだ。

凪:じき潮が変わるんだよ。ここらは复雑な潮目になってて流れも速く强い。岛に入れるのは大潮の日。仅かな时间なんだ。

ギンコ:なるほど。简単には入るそうにゃ。

凪:头気をつけてください。

ギンコ:お前さん、渔师かなんか?

凪:この岛に渔师はいない。月に一度しか安全に船を岛に出せる日があるからね。

ギンコ:岩しかないなあ。

凪:うん、土が少なくて贫しい岛なんだよ。皆なんとか生きてる。「生き神」を心の支えにね。

ギンコ:生き神?

凪:ああ、人だ。隠れて。

女:ごめんね、これは食べられないだよ。生き神様に差し上げてお前の病気治してもらえなきゃね。さあ、负(お)ぶさりな、いまにきっと楽になる。

ギンコ:な、おい、俺たちはなんで隠れなきゃならないだ。

凪:俺が见てほしいのはその「生き神」なんだ。

ギンコ:ああ?

凪:あの子はただの人间だったんだ、どうか助けてください。皆骗されるだけなんんだ。

凪:あのこだよ。隣が父亲のこの家のとうしゅだ。彼女の身には毎日「奇迹」が起こる。今日はそれを信者の人たちが参拝できる日なんだ。

ギンコ:呼吸も完全に止まった。いまの见たか?

凪:はい?

ギンコ:お前にはみえんのか?

父:そう、しっかりこの香吸い込みなさる。心に苦しみの病も取りのぞいてくださるでしょうか。不老不死なる生き神様の身力です。

凪:あとはまたもとの姿に回复していくんだ。夜明けにはなにもなかったように目を覚ます。

ギンコ:话の通りだったが、さすがに惊いたなあ。あれって病が治るって?

凪:あんなのでたらめだ。俺の母さんは治らずに死んじゃったよ。畑の収获をほとんど生き神にみついてたのに。あの生き神信仰(しんこう)は岛主の一族がこの岛で始めたんだ。潮を読み、初めてに岛が入ったのは岛主の先祖の一段だったらしい。それ以来、岛主の一族からは代々生き神が现れるようになった。それを闻いた人たちがこの岛の奇迹を従って少しずつ集めて始まったんだ。一人生き神が死ぬとまた别の生き神が现れる、半年と経たないうちにね。そしてくうちあの生き神の匂いで不治な病が治る人も出た。俺はとても信じる気取れなかった。けど。

父:あこや。また外の人と游んでおるのか?来なさい、大事な用がある。

凪:先代の生き神が死んで一月ころのことだった。あれも昨日みたい大潮の日覚えてる。そしてあれきりあんな言叶も通信ない。昨日のことも覚えていられない。まったくの人になったしまったんだ。それはそういうことだったかしばらくして分かった。

父:また病が治ったものが出たのか、やれやれ、暗示で治ってのはめでたいものだ。あこやもできる子じゃなかったが。

凪:许せなくて、俺はあこやを直せる人を探したんだ。もう戻らないっと言って岛を出た。戻れのが知れたのが岛主は俺を疑っただろう。正直、ギンコさんあんたも危険な。

ギンコ:ああ、まずいどきしまったなあ。

凪:お愿いだよ。このまま黙ってるなんていやだよ。

ギンコ:まあ、付き合ってやれよ。速いとこ本人と见させてくれよなあ。

ギンコ:脉が异常なほど速い。体温も人の常温に超えている。そろそろだなあ、明かりを頼む。ちょっと失礼ですよ。いった、虫だ。こううんで亲が死んだ。

凪:何が见えたの?

ギンコ:原因はびくに寄生しているものだ。だが、こいつを取って元にもどれるのか?患者はこの子だけなのか?

凪:ほかにも何人いる、あの岬に隔离されてるんだ。かれらも皆あこやと同じなんだ。昔からごくあれにそういうひとが出る、代々の岛主は彼らを称(たた)えてここに住まわしたんだ。生き神の近づけた信仰の厚きものとしてね、残された家族は祝福してる。自分たちの身内にすべての苦しみから解放されたものが出たって。

ギンコ:结局、新しい発见はなかったか?なあ、あのこが発病した日も大潮だったなあ。

凪:うん。

ギンコ:大潮の日しかは入れない场所とかどこか思いつくか?

凪:岬の先端の洞(ほら)。あの辺りだよ。なにか探してるの?

ギンコ:うん、いった。见ろ、こいつも寄生されている。ほかにもいるかずだ。この一帯を探してみてくれ。

凪:また二匹见つかったよ。

ギンコ:ああ、おいといてくれ。

ギンコ:凪。疗法见つかったぞ。

凪:大丈夫だから、あこや、静かに。

ギンコ:一瞬で済む。ここか?

凪:あこや?

あこや:凪?

凪:あこや、よかった、よかった。

あこや:そう、父さまはどうして?

凪:あこや、岛を出よう。次の大潮まであと三日。岛主さまに治ること隠しとおすんだ。

あこや:でも、あたしこの岛が好きよ。父さまはきっとわるかったっていってくれる。わたしが逃げればほかの谁かがいき神になるだけ。

ギンコ:その原因を持ち出せばいい。この虫の悪用だよなあ。生き神になった日のこと覚えてるか?

あこや:あのひには父さまに。

父:あこや、さあ、お前のために取ってきたんだよ。

あこや:きれい。

父:いい香りだろう、吸ってごらん。

凪:ひるがおにに似た、香りの强い花?あの岬の洞に见たよ。暗くて确かにひるがが咲いてたんだ。あれが原因?

ギンコ:三日后か?

凪:うん、とにかく岛主さまにきづからなきゃ。あこや、それまでは生き神を演じてくれ。

ギンコ:どうした、调子はもどらんか?

あこや:なんだか不安でためらないの。生き神だったころは日が暮れて衰え始めて眠りにつくとき、いつもとても満たされた気持ちで、目を闭じたのに。いまは恐ろしいの。目が覚めてもただ昨日までの现実の続きが待っている。目の前に広がる果てしない膨大な时间に足が(すく)む。

ギンコ:お前さん、虫の时间で生きてたんじゃないかなあ。あの虫は寄生した动物の体内时间を同调させるものだった。生き物の寿命は种によってそれぞれ违うが、生涯脉打つ数がほぼ同じを言われる。体内に流れる时间の密度は违うってことだ。あの虫の生涯はおよそ一日。それをお前さんは毎日味わっていた。

あこや:そう、それてかな。一日一日、一刻一刻が息を呑むほど新しくてなにか考えようとしても追いつかないくらい。いつも、こころのなかがいっぱいだったの。

凪:あと半时もすれば入れるよ。

父:あこや、おや、可笑しいね。とうに衰弱している时间だというのに。

あこや:とう、父さま、わたしどうしてだか治してたの。

父:黙れ!凪がもどっているそうだね。どこへいったか知ってるね。ああ、今日は大潮だったね。

ギンコ:暗暗にひらがお、すごい匂いだ。この部分は虫の巣か?动物に寄生したほうが确

実に子ウンを残せるだなあ。

凪:ああ、ギンコさん。

おとこ:生き神さま、どちらへ?

あこや:あのう、岬の洞ってどこにあるか教えてください。

男:おい、生き神様が言叶を。

あこや:ごめなさい、すべて话しますから、お愿い、凪を助けて。

父:凪、ここでなにをしている?

凪:よくおのおのと。

ギンコ:よせ、どうする気だよ。ほっとけ、どにみちやつらは长くはない。虫を安易に利用続ければ、人は少しずつ正気をうばれていく。いずれあんたらは破灭する。虫を使うにはふそうぼだったんよ。

凪:挑発してるけど、なにか考えがあるかな?

ギンコ:さてと、凪。逃げろ!

父:追い!躯はおかばにやれ。さて、

男:花をのっていたぞ。ああ、あこや殿の言ったとおりだ。

男:许せん。

凪:追い手はまいたみたいけど、潮がのってきた。

ギンコ:くそ、持ってあと半时かな。

男:人だ。いたぞ、凪たちだ。おい、よおけだろう、岩を広けるからなあ。

あこや:わたしが杀したんだ。父さま、父さま。

父:さあ、お前のために取ったきたんだよ。

凪:そんな颜してるなよ。

父:いい香りだろう、吸ってご覧。

凪:ああ、あこや。どうして、どうして?

あこや:ごめんね、凪。向うなら生きていけるの?

ギンコ:最初より强く寄生している。これを取り出すのは。

凪:もういいんだ。あこやは心底から満たされた表情をするのは生き神でいるときだったから。

ヌイ:今日も日が升り、また沈む。朝咲く花が首から落ちる。今日も日が沈み、また升る。辺り一面花が咲く。けれど、昨日とは别の花。されど、今日もきれいな花。

凪:あの日、大潮を逃したしまったギンコさんは一月の间岛に残った。その间、岬の人たちをすべてすることができた。けれど、大潮がきたあの洞が开くたび谁かが生き神に戻ってくる。

ギンコ:恐らく何人かをありがたくじゃない。いずれまた花を吸うだろう。あこやがいってたんだよ。

凪:俺たちも似たいものだよ、これから、なにを胜てにいきばいいか分からない。

ギンコ:普通にいけりゃいいんだよ。鱼がとれりゃ少し楽にだろう。いつでも船を出せればあの洞を皆でけずればいい、容易なことじゃないだろう。だが、お前の目の前には果てしなく膨大な时间が広がっていてるだろうがなあ。

第七集是耗时最长的

虫师第七集

雨がくる虹が立つ

虹郎:止んできたなあ。これは近い、消えるな、消えるな、消えないてくれ。

ギンコ:お邪魔するよ。

男:いや。

ギンコ:まいたね。まったくだ、ろくも前に见えないしね。

男:いつになったら止むね。

虹郎:あと半时はこのままだなあ。

ギンコ:あんた商人かい?食いもんなんか売ってくれ?长雨で、皆やられちまってなあ。

虹郎:いや、この中空だ。商人でもない。

ギンコ:じゃ、何入れんだ、でかい空だなあ?

男:それ兄ちゃん、死体だよ、死体。

虹郎:虹だよ。こいつになあ、虹を入れて持ち帰ってるために俺は旅をしてるのさ。

ギンコ:おお。

男:それはいい。ねえ、话してみろよ、なんだってそんなことしてるのかい?ちょうどたいくつしてたところだ。

虹郎:いいぜ。あれは俺ががきのころの话だ。

母:あんた。贤郎、父ちゃんを。

子供:お父ちゃん、またかよ、いよしてくれよ。

父:雨がくる、雨が来る。虹が立つ。

母:あんた、あんた。

虹郎:俺の父亲は俺が物のころをついたごろ既にあまきを悟(さと)ると俄かに别人の様子となりさもうれしいに山野を駆け回ってのは何日も郷に戻れないような奇妙のたち男だった。そして数日后抜かれみにはまってるの発见されたり自分でひょっこり帰ってきたりすむのだった。そして、雨の降らないひはあびるほど水を饮んだ。

母:耻ずかしいたら、なにを。もういっそ帰ってこなくていいのに。

父:俺にも自分がどうしまったかわからんのでよ。あの虹を见たときから。

母:そんな虹あるものか?あんなたの头がいかれちまっただけだよ。

子供:なあ、父ちゃん。雨のとき走ってるのは楽しいのか?

父:これはなんとも言えず楽しい。

子供:じゃ、俺もやる。

父:それはいかん、母ちゃんに止まられるぞ。

子供:それじゃ、また虹の话をしてよ。

父:そうか、うん、こりゃには母ちゃんに内绪だぞ。

子供:うん。

父:あの日はなあ、お前の生まれる日の前でようやく大水の行った日だったよ。

男:畜生、あんなに苦しく立てたのに。

父:仕方がない。まだまだ考えが足りない言うことだろう。

男:だが、あれ以上顽丈な桥なんて。

父:虹だ。やけにはっきりしたよなあ。よくよく见てみればその虹はすぐそこの川から生えていたという。虹の( )と掘ればお宝あると闻くなあ。消えた?

虹郎:それからその虹は雨の后のは必ずどこかに姿を现すようになった。见るたびに姿を変えて亲父を楽しますと、ほかのものには见えないようで、唯一虹に反応しめしているのはまだ乳のみにだった俺という。けれど、ある日、やけに远くにいると思ったら。

父:それきり、現れなくなった。それ以来、なんでも飲んでも喉が渇く、雨の降りそうな

日は、体のそこがぞうぞうしてなあ。気がつくと、野山を駆け回ってる。こうやってまだまっているときはまたあの虹が恋しくて恋しくてとなんだ。どこにいるのか?いつか探してみたい。

虹郎:しかし、やがて親父は病でとこにふすようになった。それでも、雨の前になると、外に出たがりあわれたが、やがて、足も立ったのほどに衰弱した。親父、水。

父:あの虹がみたいなあ。

虹郎:それで、なんどもあの虹を探して親父に見せてやろうと旅をしてるってわけさ。

男:で、虹を両手でふんずかまえのか?

虹郎:それは実際にみてみねえとは分からないさ。

男:それもそうだ。おっ、小降りになってきた。さて、行くかな。その話、最後の詰めが甘かったなあ。またしゃでなあ。

虹郎:さて、俺も。

ギンコ:おい、待ってよ。その虹探すんなら、あっちへむかったほうがいい。いまの話、ほら話ではないだろう。親父さんが見たてのは「こう」だと言う蟲だ。俺もいままで一度見たことないだが、生えてる根元っても見たかったよなあ。でほどで、よけりゃ協力するけど。報酬はとうめんの飯代。ああ、そのでかいガムなあ、うっぱらちまい、役には立たんぞ。ほれ、そうすんだよ?

ギンコ:まずは、普通の虹ってのは太陽を背にしてるときしか見えないものだったよ。だが、「こう」とはそれとは関係なく現れる。あと、それだよなあ、の並びが逆なんだよ。その辺がみきあめてから終わらないときりがない。

虹郎:なあ、ギンコとかいかなあ。

ギンコ:あん。

虹郎:あんなただって、何か目的あって旅をしてたじゃないのか?なぜこんな通りすがりに手を出す?

ギンコ:だから、俺もそれ見たいだけだよ。特別があって旅してるわけじゃなくてなあ。でもまあ、ずっと「こう」を探してるわけても、そうだなあ、りしゅまでに見つからなきゃ、手を引くよ。それなら、いいだろう。雨あがりによく姿を現すってのは虹と同じらしい。雨を読んで移動しなきゃかなあ。

虹郎:それなら、ずいぶんと心得があった。この辺りは当分雨は臨めそう見えない。「雨山」かつらがかかっている。あの周辺は明日雨だ。

ギンコ:おお。

虹郎:俺だってな、闇雲に歩き回ってわけじゃねえよ。出た!

ギンコ:いや、あれはただの虹だ。あれも違うなあ。まあ、予想はしていたが、探すとなるとみつからもんだなあ。あんたは旅を始めるのはどのくらいになるんだ?

虹郎:五年になるなあ。

ギンコ:五年。あの話、病床になる親父を見せるためってのは嘘だろう。病人かがえた家族をおって、五年も旅してるなんでなあ。

虹郎:親父に見せたいってのは嘘じゃない。でも、それは行動の端じゃなかったなあ。俺の名はいったっけ?

ギンコ:うん?いや。

虹郎:虹郎と言う。虹を探しては徘徊(はいかい)を繰り返す親父を常にせをくんだなあ。この名のために村では笑いものにされてきたよ。西の国に、有名な暴れ川がある、俺の家はそこに代々橋をかけていた橋大工だ。なんどかけても、大水のたびに橋を流された。皆親父には期待してたんなあ、それでも、親父の跡をついた兄は優秀だった。壊れるたびに

丈夫な構造な橋を考えてた。俺にはその才能はからきしなくてなあ。筋を切る怪我をしてから、左手の自由が利かねえ。大工としても二流以下だ。いつしかあの村には俺の居場所は。親父のそばにしかなくなっていた。それにたえられなくなって逃げ出してきちまっただよ。

ギンコ:じゃ、結局なんだ?虹を探してた理由ってのは?

虹郎:虹を見るたび、追わずにはいられなかったんだよ。消えるな、消えるな。親父の言葉を確かめたがったのはうれしい、親父と俺を笑ってきたあの連中に原因はこれだといってた。けど、何より村を出ては俺は結局負け犬だからなあ。なにか活きるための目的をつくるにゃ。ただ、いきてくことですらできねえ。

ギンコ:目的ね。

虹郎:お前は目的もなくたびをしてると言ったなあ。まあ、何か理由があるか。旅をしてくは楽じゃない。目的がなくて旅を続ける気になるものか?

ギンコ:それは偶に休みたくもなる。そういうときこえて目的をつくる。そうすればこうやって余暇もまれるだろう。ただ活きるために活きてるには余暇でもないからにゃ。

虹郎:けっ、こっちは真剣にやってるいてのに、息抜きのつもりか?

ギンコ:俺だってには真剣にやってるなあ。

虹郎:心構えの問題だ。

ギンコ:なんだ、そりゃ。休むのって活きるためには切実の問題だ。それになあ、お前より真っ当な動機と思うなあ。お前は( )を紛らわすために虹を追うことで自虐を続けてるだけだろう。不毛だね、どこで慣れをほろして過去を捨てよかったのよ。

虹郎:分かっている。それができぬからここにいるんだ。だが、これも潮時かもしれん。俺も、りしゅまでですることだなあ。

ギンコ:おい、待ってよ。おい。

ギンコ:お、お目が高いね、旦那。そいつは人魚の爪だ、煎じして飲めば心薬になんだよ。安くしとけよ。

男:いま雨を降らす薬はないもんかね。

ギンコ:それはねえよ。

男:ほうひりつづけじゃなあ。田もからっちまうよ。

ギンコ:そんな薬があったら当に使ってるわ。おい、ちゃんと空を見てるよ。そろそろいいごろだろう。

虹郎:ああ、のど渇いた、もう汗もでねえ。雨がくる。ギンコ!あれをみろう!

ギンコ:太陽が虹の中に。おい、あんまり初めから飛ばすな。

虹郎:畜生、どこに消えてる!

ギンコ:位置はこんな辺りでいいはずだ。この辺りまた雨は降りそうだし。そう遠くへはいってないかもしれない。今日はここで待ってみよう。

虹郎:雨の場所は目でみずとも分かった。親父もこうだったのかなあ。

父:虹郎、お前もそろそろ俺がつけた名前をくらめしくにるだろう。俺はおれが見たこの世で一番美しいものの名をお前にやりたかったが、わるかったなあ、おかげで、友たちにも笑われてるだろう。これを、別のいい名を考えてといた。明日からそうなれれ。

虹郎:いいよ。そんなこと言うな。俺、負けねえから。親父より立派な橋大工になったみせるから。

ギンコ:おい、起きろ。雨降ってるぞ。

虹郎:出た。

ギンコ:急げ、近いぞ。すげい!俺が見たこの世で一番美しいものの名を。

虹郎:美しい。

ギンコ:よせ。

虹郎:親父が言ってたのは本当だった。こいつを持って帰らにゃ。

ギンコ:馬鹿野郎が、どうともないか?近くて見るまで確証はなかったが、皮膚にびりびりくる、こいつは流れ者の一種だ。

虹郎:流れもの?

ギンコ:命を持つものでありながら、自然現象そのものに近しいもの。命があること以外は、光と雨のつくる現象である虹と同じ。恐らく「こう」をつくりだしたものは光と「光酒」を含む雨だ。

虹郎:光酒?

ギンコ:蟲の生命の元となるものだ。流れ者とは洪水と台風と似たようなもの、発生する理由とあれと目的はない。ただ流れるために生じ、なにからも干渉を受けず、影響だけは呼ぶし、さて行く。そういう蟲に触れれば取り付く。

虹郎:一瞬、あれの中に入って気がした。親父はあの上昇する滝のようなものに飲まれただろうか。俺に自由になる相手じゃなかったか?体に穴の開いたのようだ。一層すがすがしいくらいだ。

ギンコ:これからどうするんだよ。

虹郎:さあ、しるし考えるよ。お前は?こいつと同じか?また、流れるだけだよ。

ギンコ:その後、男がどこか行ったか知るよしもない、ただ、西の国の有名な暴れ川に、壊れぬ橋ができてというが聞いた。増水してくれば、渡し板が外し、水の流れるままに泳がせ、水が引いたら元に戻す。流れ橋という橋が一人の男の考えでつけられてという。

虫师第八集

海境より

ヌイ:浜には何かともの珍しいものが流れつく、南方の木の実や貝の殻、巨大な深海魚、まれに人、もしくは人を乗せぬ空船。

子供:向うへ行こうか?

ギンコ:あのうさ。ここらから湾の向うまで渡しで出てるって聞いたんだ、違ったわね。

シロウ:この時間じゃ皆猟じゃないか?

ギンコ:なんだ、じゃ、昼間で待ちがいいので。あんたなにしてんだい、こんなところで?

シロウ:俺も待ってるんのさ。ここの沖で嫁さんと妙な別れ方をしたもんだなあ。まあ、聞きたがないだろう、そんな話が。

ギンコ:いいや、俺は聞きたいがね。

シロウ:そうかい、なら一つ。あれは二年と半年前ほどになるか。

道日:魚臭い。あんたの生まれはここまで田舎とは思わなかった。ねえ、戻ろうよ。

シロウ:うるせいなあ、どこへ戻ってんだよ。

道日:なんとか父さまに頼むんでさ。あんな失敗で首切りなんて可笑しいわよ。

シロウ:無理だよ。

道日:どうしてよ?

シロウ:もともと店は傾きかげだったんよ。俺を切る体のいい口実探してたさ。

道日:じゃ、なんであんたなの?家の跡を継がせるって言ってたのに。

シロウ:お前と婚約したことで同期にえらくねたまれたからね。いろいろ吹き込まれたじ

ゃねえか?お前のことだってこんな僻地(へきち)までついていくとは思わなかったんだろう。正直、俺もついていくとは思わなかったか。

道日:なのを、それ?

シロウ:お前も長女じゃないし、もともと打算もあったろう。戻りたがったら戻りいい。お前には土地じゃない。

男:奥方、乗らねえ?

シロウ:道日、陸(おか)についたら謝ろう。海蛇?急に靄が出てきたなあ。

男:なに、陸はよく見える、大丈夫です。

シロウ:おい、どこ行くんだ?そっちは沖だぞ。

男:わからねえ、舵(かじ)が利かねえ。

シロウ:船は捨てろう、こっちへ来い。道日、お前も。

道日:いやだ、蛇がいる。

男:どこに?

シロウ:かまうな、こっちへ来い、速く。

道日:こっちって、どっちよ。どこ、どこにいるの?

シロウ:道日、道日。追ってくれ、速く。

シロウ:そのまま、船は覆り。俺はこの浜へ流れついたが、嫁さんの乗った船のこの隻が、見つかることはなかった。この浜へは潮の流れせいか沖のものがいちどに流れ着く。嫁さんの船も転覆したなら、積荷一つもここへ流れ着くはずなんだかなあ。沖へ漂いたとして活きてはおらんだろう。だが、どうにも証がないうえ、うごけんのだ。

ギンコ:蛇?いや、しかし、それで二年半もここにして?そりゃはあんためでたいよ。証があろうがなかろうが、もう活きてはおらんだろう。万一助けられたとして別の人生は読んでるさ。あんたももう自分を考えたほうがいいじゃねえか?で、余計な口したたが。まあ、達者でいてくれ。

ギンコ:靄?蛇?聞いたことあるような。

男:じゃ、いつも通りね。

ナミ:まいどありがとうございます。

シロウ:あんた、それ、町で持って売ってのかい?

男:そうだが。

シロウ:で、その値甲斐。町の相場しらねえと思って、いくらなんでも、それはぴんはねしすぎだろう。あんた、倍はもらっていいだぞ。

男:なによ、知ったふうのことを。

シロウ:そりゃ問屋ずっとも長かったしなあ。あんたみたにな仲買(なかがい)がいるから、ここらの漁師が貧しいんだよ。町からの手間を入れてもこれくらいだろう。

男:それなら、先の村へいくね。

シロウ:なら、これでどうだい?

男:いや、しかしなあ。

シロウ:これ以上はしずれんなあ。次からはこれくらいもらっていいから。

ナミ:本当、いいの、こんなに多い。助かるよ。

シロウ:皆にもそういっとくといい。

ナミ:ありがとう、ごめんね、あんたのこと変な人だと思ってんだ。

男:今日もいい値でもらえた。ありがとうなあ。

女:これ、少ないけど、取っていておくれ。なあ、お前さん、宿へ出て家の隣に運んだっ

て。もうここにすんじまいないよ。

男:そりゃいい。そうしのよ、なあ。

シロウ:おい、鱶(ふか)だ。鱶がいるぞ。

男:なに、どこにいた?なにもおらんぞ。なんだよ、シロウ、ひとさわがせたなあ。

男:昨日で、大潮だったか?

男:いいえ。

男:なんだかなあ、妙に潮が高い。

ギンコ:いないが。あ、あのう、ここらでずっと嫁さん待ってた男、もうここにはいないかね。

ナミ:その人はもうちゃんとこの村で生きてんいます。だから、どなたか存知ませんが、もうかかわせないで。

シロウ:どんしたんだよ?

ナミ:何もないよ。

シロウ:なくはないだろう。

ナミ:なんだか怖いだよ。この間からあんたはよく変なことを言うし、潮はどんどんあげてきてとまらないし。変なことばかり、あんたは偶に沖のほうずっと見てたりするから。ふらふらと沖にながされちまうそうで。

シロウ:なんだよ、それ。どこにもいきゃせんよ。

男:こんな潮があがるのはあのときと同じなあ。三年くらい前だったか。

男:あんなときも靄が出てたんなあ。

男:こりゃ納まるまでに出るほうがいいぞ。こんな靄に入ると帰らん船があるなあ。それで、三年くらいして空の船だけが戻ってくるんだと。

シロウ:船だけが戻ってくる。波がない。これでは戻ってきたとしては浜までは。

ギンコ:やはり気になるか?

シロウ:あんた。

ギンコ:お前さんに聞いた話が気になってなあ。あれからいろいろ調べてみたんだよ。それによりゃ、次期再び荒れるってで戻って見たたんが。お前さんの言ってた「蛇のれ」ほかのものには見えてなかった。違うか?

シロウ:あ、ああ。

ギンコ:やはりなあ。そいつは恐らく蟲だったんよ。「海千山千」って言葉があるだろう。海に千年山に千年生きた蛇は龍になるってやつだが。それはこいつと通じるものがある、まあ、実際何年活きてかは知りよしもないが、靄もようなものを発生させながられを成して外界を巡るものと山深くひっそりと生きるものとの分かれる。姿はどちらも一見蛇とさようもない。時が来ると、山のものは山を下り、海のものは近海により、沖で合流し、千日後、同じ近海へ戻ってきて一体の蟲になる。

シロウ:それじゃ、あのときのれと同じやつが戻ってきてるわけか?やはり沖へ。

ギンコ:まってよ。

シロウ:平気だよ。あの靄、外からは何も見えないが、中からは不思議と外はよく見えた。

ギンコ:お前さん、なぜあの時、お前の嫁さんだけが靄に飲まれてのか考えたことがあるだろう?あの靄の中からは陸に戻ろうと望むものしかほかは見えず戻れんのだ。前にあったときは、お前さんは嫁さんの遺品を見つかった時点で、活きる望みを失うかのように見えた。

シロウ:いまはもう違う。

ギンコ:そのようだなあ。まあ、そういうことなんてその辺自覚してなら俺のものに同行

してもいいぞ。覚悟できてるなあ。

シロウ:ああ。

ギンコ:本当だなあ、靄からは奇妙なくらい陸がよく見える。お前、まだ見えてるんだなあ。

シロウ:見えてる。ああ、来た。

ギンコ:すげい数だなあ。

シロウ:あれだ、あのときの船だ。

ギンコ:遺体もあるようだ。

シロウ:大丈夫だ、つけてくれ。

道日:あんた。

シロウ:道日。無事で。

ギンコ:どういうこと?

道日:もうあきらめかけてた。でも、遅いわよ。何日もほたらかしにして、もう三日を経ったでしょう。

シロウ:ええ、三日?一体どうなって?すまなかった。俺、お前にひどいことを。

道日:そうね、ひどいことを言われた。でもいいわ、こうして助けにくれたし、あたしも文句がすぎた。でも、本気じゃなかったよ。あんたの故郷早く見たい。

シロウ:ああ、行こう。さあ、速くこっちへこい。

ギンコ:待って、お前、いま、陸は見えてるのか?

シロウ:大丈夫だ、ちゃんと見えてるよ。向うに。

ギンコ:潮時だ、お前戻るべきがこっちだ。それはもう人ではない、蟲が変体し始めている。ここにいちゃまずい。速くそれから離れろ。

道日:シロウ?

男:おい、いたか?

男:いや。もう駄目なんじゃねえか。

男:おい、高波だ、きをつけろう。

男:なんだか靄は晴れてきたなあ。

ギンコ:俺たちが浜へ流れ着いたとき、村人らはとう生存にはあきらめたいた。ほんの二三時間沖に出ていたつもりだったが、陸では一月あまり経っていた。

ギンコ:あの靄の中は、蟲の時間が流れていただろう。せめても救いだなあ。彼女は三日さびしい思いしかだけで済んだ。

シロウ:ああ、そうだな。

ギンコ:翌日、男の妻の船が浜へあがった。

ギンコ:いいのか?

シロウ:いいさ、もう、持ち主はいないさ。

虫师第九集

重い実

祭主:どうした?

妻:なんだろう、これ。ねえ、あんた。これ、歯かしら。

ヌイ:父母の躯に根を播しない苗を青い青い根を伸ばせ、重い重い実をつける。

ギンコ:あのう、なんか食う物もらえねえか?

農夫:この田を見ろ。ひどい冷夏で蓄えるするで精一杯だなあ。

農夫:あきらめなあ、一山向うの村に行きなよ。あそこだけ今年は豊作だって。

農夫:おい、妙なこと進めるなよ。止めときなよ。あそこの米は普通じゃねえ。

農夫:天災のたびに豊作になる先祖の呪いなんだとよ。

男:別れ作だ。

男:また誰かがご先祖様に取られるぞ。

男:今年は誰か?

男:ご先祖様は弱い物から取りなさる。

ギンコ:やあ、見事な田だなあ。

サネ:誰?なにか用?

ギンコ:いや、いけれ食う物売ってくれんかと思って。

サネ:他所もんにやる物はねえよ、毎年十分の米はとれねんだ。蓄えるとき蓄えなきゃならねえや。

ギンコ:ええ、それじゃ今年の豊作は奇跡ってわけか?

サネ:そうだよ。俺らがしっかりご先祖様をお祭りしてだから。土になったご先祖様が守ってくださってるんだ。

ギンコ:その代わり、一人連れてくのか?ご先祖のしょようにしちゃあんまりだよなあ。

サネ:しかたがないんだ。

ギンコ:ちっともしかたがなさそうじゃないが、ちっと話くれねんか。

サネ:この村のたはだがひどい天災のたびに豊作に見れのはもうずいぶん昔からのことだと聞いてる。そして、そんな年にかならず秋に誰かの口の中に「瑞歯」が入ってる。その歯は秋の終わりに実は抜き落ちて、その人は死ぬんだって。その命は豊作を戻らした先祖様への備(そな)えものだって伝えられいきたんだ。でも、みんな感謝してきた。この奇跡がなかったら、この瘠せた土地で俺たちはいままで生き延びては堪えなかっただろうが。

ギンコ:命を落とせものに共通する点あるか?

サネ:弱いものからと言われている。

ギンコ:遺体は土葬に?

サネ:うん。

ギンコ:抜けた歯は?

サネ:歯は祭司様をおどうぎょうに祭りすんだ。

ギンコ:祭司?

サネ:この村である祭りの一切を取りしきり人だよ。俺はいずれ跡を継ぐんで、いろいろ教わってるんだ。抜けて少し後と歯は祭司さまにしか見えなくなるだって。だから、祭司様が祭りするんだ。

ギンコ:お前はなんで後つきに?

サネ:俺も祭司様と同じで時々人に見えないものが見るから。

ギンコ:その祭主と会いにたいが。

サネ:祭司様、裏の畑にかな。

ギンコ:農学書に、日記。

祭主:客人とは珍しいなあ、一体どちらさんで?

ギンコ:蟲師のギンコと申します。「成らずの実」と言うのを探しておるですが。

祭主:さてね、サネ、お前まだ畑仕事の途中だろう、終わってからまた来るなあ。今年は豊作だ、しっかり準備しないとつかねえぞ。

サネ:うん。

祭主:なんだ、またお母さんのこと心配いっぱい?大丈夫、大丈夫だよ。心配するな。こら、これ食わせてやりなあ。

サネ:うん。

祭主:蟲師ってあからは先代のごろにもここに来たと聞いてる。だが無駄足だ。ここにはそんな実はありません。

ギンコ:では、この実りは先祖の力によるものだと?

祭主:ご先祖の力か?無論それもある。皆の信仰があるからこそこの土地を見限るなく労働できる。だが、それだけじゃない。長年土を肥やすすべを皆で研究し続けた。その結果がときにこういう実りをうるのだ。毎年の収穫が増えてる。

ギンコ:では、瑞歯については?

祭主:成人が歯を生えるなど稀にあること。実りとは無関係だ。さあ、もう帰ってくれ。

ギンコ:もう一つだけ聞いていいか?

祭主:なんだ?

ギンコ:「成らずの実」のことはご存知のようで。

祭主:ああ、先代から聞いた。ある一人の蟲師が「光脈」中を封じ込めたものだったか。

ギンコ:そう。あんたも「光脈」を感覚的にわかるだろう。蟲の見えるたちのようだから。蟲ってのはそういう微弱なものになるほど光を帯びてる。蟲の根源たるもの光酒というものに近いからだ、光脈とは光酒の流れるすし。それらは言えは生命そのもの。操作できれば不死や蘇生いかようにも使え道がある。無論、それは蟲師最大の禁じ点では、が、例外もいくつとは存在してきた。この実もその一つ。土に埋めれば周囲に一年かぎりの豊饒をもたらし、代償として恵みをうけた生命体の一つを奪っていく。それが我々に伝わっていく記録。

祭主:それで、あんたとしちゃ、その実を見つけ出しちゃどうするつもりは?抹消(まっしょう)するのか?活用するのか?

ギンコ:俺が聞きたいのはそれでね。あんたならどうする?一つの命で多くの救えるうえが、手の内にあったなら。

祭主:使うだろうなあ。そんな実がすでに実在しまってるのなら、犠牲をすごすことは我が罪だ。

ギンコ:だが、確実に一人が死ぬことを承知で実を埋めたらあおれは人を殺(あや)めることと同等だ。例えそれで助かる命がいくつあろうと、死ぬものがいとう関係なく(

)にされる。

祭主:その程度の罪ならば、誰も手を染めるだろう。一人失っても二人守れるのならば。

ギンコ:確か一年きりという短い目でみや、つかわんてはないだろう。だが、一度使えば何度も使えことになる。そしてあの実はいきている。使うことに影響力が増していく。やがてはすべての均衡を崩すものとなりだね。

祭主:じゃ、お前はつかわんというのか?使わずにいかれるのか?

ギンコ:わからねえ。郷で活きた覚えないし。そうなるまえに土地を捨てる。

祭主:ここには、この土には先祖の骸が眠ってんだよ。この土地を開き、ようやくここまでにしてきた。それが俺らにとって唯一の誇りなんだよ。

ギンコ:その土に異形のものを埋めるのは土に汚(けが)すことにはならんのか?

祭主:なにを言ってる?もしもの話だ。そんなことは分かってる。そんな実がもしも本当にあったなら、もっと、慎重に考える。

祭主:そう、そんな実は一人の人の手に余る。実りすぎた実の穂が重い(こうべ)を垂れるように必ず手から零れ落ち、土へとは横たるのだ。その後(のち)のひとの苦しみを知るべくもなく。

サネ:話は終わったの?

ギンコ:まあ、大体なあ。

サネ:それであなたは皆を助けてくれたの?

ギンコ:ああ、だが、それには村全体のしょうだつだいいる。別れ作との仕掛けをすべて話した皆。どこかに皆を集めてくれるか?

サネ:うん、でも、一体どういう。

祭主:田を焼くというのか?誰かの瑞歯を生える前に、実を消してしまうとないと。

ギンコ:ああ、そうだ。ようやく認めますたか。

祭主:お前の思い違いだ。そんなことをしたも誰もたすからん。皆おかしさせるつもりか?

ギンコ:一年ここへ離れれば済むことだ。一旦ちりちりになりゃ、ほかの土地でそれぞれなんとかして一年生き延びることはできるだろう。春には燃やした灰が土を肥やしてくれるはずだ。

祭主:ここを離れて一体何人が戻る人というのか?皆知らぬから耐えていられるのだ。本当の豊饒というものをいいのだ、これで。皆に妙なことを吹き込むなど許さんぞ。

サネ:祭司様。

ギンコ:おっさん、なんか病持ちのか?

サネ:よくはわからないけど、このごろ体調が悪いみたいで、時々薬飲んでだ。

ギンコ:薬?

サネ:確かこの中に。

ギンコ:一体どういうつもりでこんな毒を飲んでだなんかしらねえが、このまましんじまうのは無責任なんじゃないか?

祭主:蟲師さんよ。田を焼こうなんだ、あんたあの実を利用するに来たなさようじゃそうだなあ。頼む。俺はあの実の最後の犠牲者だ、俺はそれと決めたんだ。あの実をどこか持ち帰ったのは先先代の祭司だという。それ以後、天災のたびいくいどとなく実は用いられだが、混乱を防ぐため、その実は代々祭司の見知るところにされてきた。俺の代となり、みおしとわれる天災を訪れたのはいまから二十年からのことだ。

祭司:やはり使うべきだ。このままでは、出かけてくる。

妻:そう、気をつけて。

祭司:これでいい。

祭主:俺は村全体のことばかり考え。

祭司:これでいいんだ。

祭主:妻がえんちょを隠してたのに気づかれていた。秋に瑞歯を生えしたのは妻だった。

妻:ねえ、お願いよ。米食べて。あんたまで死んでしまう。

祭司:なにしてんだ?

妻:辛くとも食べて。私の命があんた食べて食えるなら、なんだか死ぬのも怖くない。

祭主:こんな米でする、体は貪欲(どんよく)に吸収していた。やがて、妻から抜け落ちた実を俺は捨てるつもりだった。だが、いずれまた来るであろう天災のことをおもった。そして、あと一度だけは誰の犠牲は見ずに実を使えることに気づいた。そして、今年、時は来た。俺から抜け落ちた実はサネにしょくしたもえうつもりだ。あの実はあんたのいう光脈筋に取り込まれ、姿が無くすという。ただ、あれはどういう実かは言わずに置くつもりだ。

ギンコ:いいのか、これで。あんたは誰よりここでいきてこの土地の行くすへみたいだろう。

祭主:みえるさ。このままあきらめなければ。この土地はすこしずつ豊かになっていく。いつか必ずなに( )な暮らせる日がくるはずだ。それが何代先の話ことのなるかは

わからんが、だが、どこ道ではみれんのしなあ。

ギンコ:分かった。あんたの望むすればいい。ただ、もう一つ答えてほしい問がある。

サネ:祭司様。母さんもうきっと大丈夫だ。米食って少しずつ元気になってる。

祭主:そうか、よかったなあ、だから言ったろうが。

サネ:うん。

祭主:なあ、サネ。お前に話があるんだ。大事な話だ。良く聞いてくれ。

男:おい、サネ。なんかのりと去年と違うぞ。なあ、まだ誰にも瑞歯ははいとらんのか。

男:ああ、まだきかん。ひょっとすると、今年の豊作は別れ作じゃなかったかもしれんぞ。

男:それじゃ、正真正銘わし等の努力で。

ギンコ:よ。

サネ:祭りはことなく進めるよ。皆楽しそうだ。大丈夫。言われた通りにすれるよ。祭司様。なんでこんなの?こんなのやだよ。

ギンコ:これから俺がすることは一切たごむしないてくれよ。

ギンコ:もう一つ答えてほしい。光脈は生命そのものだと言ったが、そのまま生物に流し込んで蘇生まではできない。だが、それを可能にしてのは例の実、ということになる。これは賭けだが、あの実を食えば動物も蘇生することができるはずが。ただ、植物とそい上、恐らく光脈はあんたの中に宿つづけると、そうなるとする、不死の、生物を超えたものとなる。あんたはそれを受けられいれるか?

祭主:それはあんたらの最大の禁じでだったじゃないの?そんことをして許されるのか?

ギンコ:あんたが黙ってればうばれしねえよ。成功するかわからねえし、したところであんたにとって幸福かもわからん。ただ、賭けてみるから。あんたの傷をわきだてて。実の存在を確かめるようにここで詫びだ。これくらい手を汚してもいい。しっかり考えてくれ。

祭主:考えたところで、答えなど決まっている。俺はなあ、やはりみどとけたい。この土地がこの先どうなっていくのかを。俺がしてきたことが正しいかどうかうを。

ヌイ:その郷において、その土地の豊作はのちのちまでかたむさになったというとともに奇妙な伝説も生まれた。長く続いた別れ作の途絶えたその年、できた米は死んだ男を蘇らせた。その男は不老不死となり諸国を歩き、ときより戻ってはその地を潤す、新たな農法を伝えていくのだという。

虫师第十集

硯に棲む白

男の子:大丈夫だって、先生今家の婆ちゃん見に来てから。ほら、なあ、珍しいもんいっぱいあるだろう。ええ、すげい。わあ、なんだこれ。

女の子:わああ、きれいな硯。

父:先生、先生、来てください。先生、先生、家の子が。

母:夜になって、急に寒い寒いと言い出して、一緒に遊んでた子供らも同じ様子なんです。

先生:なんだこれは。体温がひどく低い。

女の子:お母ちゃん、寒い。お布団もう一枚。

母:待ってなあ。

先生:吐く息まで冷たい。

女の子:先生。

先生:氷?

女の子:先生、ごめんなさい。今日、先生のところの倉に。

先生:倉のものに触ったのか?

女の子:ごめんなさい、硯が。

先生:硯?

ギンコ:おい、来たぞ。

先生:こっちだ、ギンコ。よく来たなあ。ぶかつだった、倉の中は郷のものに見せないようにしてたんだなあ。

ギンコ:患者は?

先生:衰弱してきてる。湯を飲ませて体を温めさせてるなあ。これだ、知り合いの収集家から買ったものだ。姿も美しいが、なにかの蟲の化石でできた硯だというなあ。

ギンコ:蟲の化石?そんなものありえるかねえ。大概やつらは骸のたくさん残った。こういう情報の曖昧のもの感じゃねえよ、厄介だなあ。自分の愛(め)でてるものが異形のものだってこと。忘れたか?

先生:すまない、つい。

ギンコ:こいつは化石じゃないなあ、まだ活きてもんに見える。で、その患者らはなにをしてたんだ?

先生:硯をどうしたんだ?

女の子:墨を磨(す)ってみようで。

男の子:うん、どうかしたか?

男の子:なんだそれ、ただの硯じゃないか?

男の子:いや、きっと特別の硯なんだよ。

男の子:あい、そこに水あるぜ。

男の子:試し磨ってみようか。

女の子:やめてよ、先生怒るよ。

男の子:ちょっとだけだって。

男の子:何か冷たいものが出てくるだ?

女の子:うん、吸い込んじゃった。

ギンコ:磨られることで再生で、体内に入り内から冷やす。これだけの条件で蟲の特定は難しいなあ。

先生:そうか。

ギンコ:前の持ち主はなんかしらねえのか

先生:いいえ、知事もそれ以上は知らないし。それ以前の持ち主は皆硯を使用して死んじまってるそうだ。

ギンコ:残るは硯の作り手か?

先生:銘がある、調べればいどころが分かるはず。

ギンコ:行ってみよう、こいつは借りてくぞ。

先生:頼む。

ギンコ:ああ。

ギンコ:ずいぶん来たなあ、この辺でいいはずが。

女:ああ、あそこだけど、もう硯は造ってないよ。

ギンコ:なぜです?

女:さてね、ばっちりやめてのさ。身寄りはないが、腕は確かだったのに。

たがね:なんだい、あんた。

ギンコ:これを作ったのはあんたか?

たがね:確かにあたしの銘だけど、それが、なにか?

ギンコ:いま、この硯のために苦しんでるものがいる。あんたの知ってることを教えてほ

しい。

たがね:よく来てくれた。探してんだ、この硯を、ずっと。わたしがしるかぎりその硯を使ったものは三人。皆一月以内はなくなったと聞く。あれは硯の名工だった父が倒れてしばらくのごろだった。わたしには婚約者がいた。彼は一山超えた町に住む、父の硯の依頼主だったが。彼も彼の両親も私が父の後を継ぐことに反対していた。

婚約者:鏨、どうしてもか?

たがね:あんたなら分かるでしょう。ここの石は父さんと私しか彫(ほ)れない。絶(た)やしたくないの。

婚約者:お前一人じゃいけんよ。実際、工房への注文も減る一方だろう。

たがね:いいわね、父さんと同じくらいのものを作って見せる。だから。

婚約者:また来るよ。

たがね:あの人に認めてもらえるものを作れば、きっと。

たがね:私はそれから更に硯作りに打ち込んだ。だが、なかなか納得なものは作れなかった。そしてある日、わたしはその石を掘り当てた。不思議と尽(つ)きられ夢中でその石を彫った。出来上がった硯はかつてない傑作(けっさく)だった。

父:いい姿だ。ほら、試し刷りなさい。

たがね:何?今の。

父:どうした?

たがね:硯から煙みたいものが。ほら、まだあそこ。

父:どこにぞ?墨もいいよだなあ。これらも安心して後を任せられる。

たがね:あの煙を吸って数日だったけど、害はないようだし、私しか見えてない、この硯を見て考え直してもらえば。

婚約者:分かった。これは預かってはいいか?両親を説得みよう。

たがね:本当?

婚約者:ああ、分かってもらえたら、すぐに文(ふみ)を出す。

たがね:だが、一月後、届いた文は彼の死を告げるものだった。わたしが硯を渡した日から、寒いと言い始め、体温が下がり続ける不思議な病に冒(おか)されたと言う。そしてその硯は不吉だと古物商に売り払われてと言った。私はその古物商を尋ねてたが、すでに売れたあとで、それきり行方はしれぬところだったしまった。だが、仲買にや古物商から噂だけは入ってきた。その後、父もなくなって私は硯を作ることを絶った。力になりたいが、私の知っていることはこれで全部。

ギンコ:いや、おかげで、見当はついたよ。

たがね:どういうこと?

ギンコ:わるいが、急いでるね。

たがね:まって、その硯、買い取らせてくれない?それは私の手で消したいの。

ギンコ:これは俺んのじゃねえしなあ。なんなら、あんたも一緒に来るといい。

先生:分かってるつもりだったが。

ギンコ:さすがに答えたようだなあ。

先生:戻ったか?悪口ただける材料はあった。

ギンコ:大丈夫。きっと助ける。

先生:炭とこん炉と。

ギンコ:鍋。あと、背負子(しょい子)あるか?

先生:うん、あ。

ギンコ:あの硯の中にいるのは「雲はみ」と言う蟲だ。遊動雲姿をしていて名のとおり「雲」、つまり空気中の水や氷を食い、雪や霰にして降らす。そのとき地上からは雲もないのに、霰が降ってるように見えるわけか。だが、自らは動かない風任せのもので、雲がない時期続くと小さく萎み、地表に降りてきて自ら凍(こお)らせて仮死とする。あれはそのまま石になってしまっただろう、なんまんと時をかけて。そして、硯として再び地表に現れ、水と与えられて何度かにわかで再生ができた。

先生:で、これからどうしようでんだ。

ギンコ:たがねさん、硯を届けるとき、山一つ超えてたとだい、あの煙を吸って無事でのはそのせいだろう。患者らをこの辺で一番高い山に連れて行く。

先生:まずい。湯を飲ませてくれ。

母:はい。もう温くなってきた。

たがね:先に行って湯を沸かしてます。

母:お願いします。

母:先生、また登るんですか?息が苦しくなって子供らも辛そうです。

先生:ギンコ。

ギンコ:もうじきだ。皆、息を止めろ。

母:お前、顔が。

女の子:寒くなくなった。

先生:体温が戻ってきた。

たがね:一体なんで?

ギンコ:空気圧のせいだ。あれは雲のおかぶ空気のそうで活きてるものだ。とすれば、その層と同じ重さのもののはず。層の近くまで来れば吸い寄せられる。あんたはもともと高地の住人だ。吸って煙はすこしずつ外へ漏れ出ただろうし、硯を届けに山を越えたとき健完全に抜けたじゃねえか。

たがね:よかった。よかった。そもそもこういう危険なものを好奇のたいしょうしてことが誤りなのよ、私が責任をもって葬ります。

先生:だから、そいつは対症方も分かったことだし、問題ないだろう。

たがね:そいうあまいで、ほかのものすべて安全といきれるの?

先生:そこまであんたと関係ないだろう。おい、ギンコ。お前も言っててくれ。硯を壊すってことはまだ中に眠ってる蟲も殺すってことだろう。

ギンコ:うん、まあ、そうなるなあ。

先生:なあ、蟲には罪はねえだ。それに、その硯壊しちっまにはあんまりに美しい、あんたにとっても自分の子のようなものなんじゃないか?

たがね:けど。

ギンコ:あんたが許せんのは蟲の眠る硯を世に出しちまった自分の罪だろう。なら、硯から蟲を開放したらどうだ?

先生:おい、これ、俺の硯だぞ。

ギンコ:今回の件は、あだしの。お前のむかりがでかい。今後の教訓として目をつぶれ。何、硯としちゃ一級品だ。しっかり使ってやろといい。

男:なんだ?雲もないのに、どこから。

先生:こりゃ、村中屋根の修理代が大事だなあ。

たがね:私に請求していいよ。一生かかっても返すから。

先生:そってもあんた、どうやって?

ギンコ:また硯を造ればいい。すぐに身を立てられる。

鏨:それは。

先生:じゃ、一つ注文してもいいかね。なんても蟲入れても構わんし。

ギンコ:みれんだらだらだなあ、お前。

たがね:そうだね、いますこし時間はかかると思うけど。

先生:しかし、いつ止んだ、こりゃ。

ギンコ:ひさびさも食うじだろうしなあ。

虫师第十一集

やまねむる

ギンコ:山に穴が開いていた。

男:ああ、さすが霊峰、見事なお姿ね。お上、蕎麦をくれ。

女:はい、お二つ。

男:あと酒ね。

男:ちょいっとごめんよ、兄ちゃん。

ギンコ:消えた。

男:しかし、誰かがいかねば。

男:だが、誰が行ったところで二の舞だ。

男:やはり今は山に入ってはならんだ。

男:ムジカ殿言っておったではないか。

男:いや、だからこそ彼のが。

ギンコ:山のことで、何かもめことですかなあ。

男:なんだ、あんた。

ギンコ:蟲師です。山の様子が可笑しいんで、おやこに立てるかと思いましてね。

男:蟲師。蟲師だと。

ギンコ:なんだ?

村長:ならば、ぜひ、お頼みしたいことがある。この山深くに住むムジカという蟲師を探してはもらいまいか?この山には代々すべてを知る主様がおられます。ムジカ殿は主様の意向を唯一知る人です。我々はことあるに指示を仰いでありました。これも彼の教えなんですが。収穫期のこの季節、我々山深くには入ることは禁忌となっておるのです。ですが、ムジカ殿が案から姿が消してしく、禁を破り数人が山深くに探して入ったところ、熱病に冒され、命を落としかけたのです。

ギンコ:ものすごい精気だ。甘いような、苦いような。むせ返り、皮膚に纏わりつく匂い。ここは光脈筋だ。生命の川の流れるところ、ましていまは実りの時期。普通の山でも精気は増す。不用意に入れば精気に当てられ気が惑う。光脈筋なら、とうせいおとる主がいるはず。山の異変は主の変調だろう。となれば、くだんの蟲師が知っているはず。郷の子供か?おい、なにしに来た?

コダマ:ムジカを探すんだ。僕はムジカの弟子だ。

ギンコ:うん、弟子がいたのか。こいつを奥歯に挟んでおく。

コダマ:に、苦い。

ギンコ:噛むのは目を回しそうにときだ。気付け薬だから。

コダマ:さ、先に言え!

ギンコ:まあ、少しじっとしてろ。今お前の師匠を見つけてやるから。

コダマ:何すんだ?

ギンコ:むぐらのり。葎という山の神経のような蟲がいる。そいつらに意識を潜(もぐ)らせて草木の中で走ってくる。来てなあ。いない。山の半対面。いた、こっちへ見た。むぐらが冷やかされた。

コダマ:だい、大丈夫なのか?

ギンコ:なるほど。行くぞ。こっちだ。

コダマ:へえ、本当?

ギンコ:鐘か?七つところだったなあ。

コダマ:あっちに鐘なんかあったけ?

ギンコ:この辺りのはずなんだが。

コダマ:ああ、あれ。ムジカ!それで、足が滑らして怪我して。

ムジカ:ずっと周りの実や草を食っておったよ。水はもっと出しなあ。郷の皆が主様の意向を伝えられんで迷惑かけたなあ。しかもなんだ、同じ蟲師に助けられるとは。

ギンコ:ギンコです。

ムジカ:ムジカだ。恥ずかしいが、礼を言うぞ。この山は自分の庭くらいにとおもとったが、なんだところで、足滑らせてはさすがに年を取った。そろそろ、任を離れるべきしれんなあ。

ギンコ:山の主のですか?侵入者から葎を引きやカリできるのは本物の土地の主か、主の術を張っているくらいでしょう。この山の異変は主であるあなたが崖から動かず術の更新ができずにいたせいだ。

ムジカ:ああ、だが、明日からはこの足はなんとか主を続けられるだろう。山は元に戻る。

ギンコ:しかし、人は主をやるのは辛いと聞く。よほどのわけでも?

ムジカ:気づいておるだろうが、ここは光脈筋でなあ。山の精気をあるてろうさる正統の主はちゃんととった。だが、郷のものが誤って殺してしまったのだ。川の水からは酒のような匂いが漂い始め、草木は熟れ過ぎほとんど腐ってしまった。俺は昔旅の蟲師をしていたが、よく経ちおりなったこのさとで。困り果てた郷のものたちを見て主をなる決意をした。妻は山の精気のせいか長くは生きられなかった。

ギンコ:では、この子は次の主に。

ムジカ:ああ、そうだ。

ギンコ:山歩きはずいぶんと達者だった。

ムジカ:そうだろう。山から生まれて山に育てだからな。郷の子供の数を見たろう。この山から流れて水で女たちは次々とこううんさずかるが、皆は育てず山へ捨てていく。獣に食われず活きてのはこの子くらいのもんだ。だが、郷に残ったこの子の兄弟はみんな薄命だなあ。この子の生存を知った両親が郷へ引き取った時期一年になる。

ギンコ:苦手な話だなあ。

ムジカ:まあ、その通りだが、仕方がない。それが一番いいと決まってる。

ギンコ:鐘の音?こんな夜中にも?

ムジカ:お前さんはずっと土地を定(さだ)めずに流しの蟲師をやっているの?

ギンコ:ああ、そうです。蟲を寄せるもんですから。一つところに住めば、そこを蟲の巣窟になってしまう。俺は蟲を払うすでを身に着けたのは必然からでしたよ。

ムジカ:それでは、御気くさをやっとるしかないか。

ギンコ:何、性分に合ってるしくじはないですよ。

ムジカ:どうか。この山から一歩も出られんみからずちょっと羨ましくもあるからなあ。よかれしかれ、俺は骨をうずめるのはこの山以外ありえんからの。

コダマ:じゃ、郷のものに知らせ帰りけど、次に僕が来るときまで無理しないでよ。

ムジカ:分かった。お前こそ入山の禁を解けてからくるんだぞ。それじゃ、お前さんも達者だなあ。

ギンコ:ええ、お元気で。

コダマ:ムジカ、僕はいまもムジカの弟子だよねえ。

ムジカ:もちろんだ、郷からここまで通おうだって鍛錬になる。お前にいまは立派な蟲師になるぞ。

コダマ:うん。

男:おい、戻ったぞ。コダマも一緒だ、ムジカも無事だ。

ギンコ:近づいてきている。風向きのせいじゃない、一体どこから?

コダマ:ギンコさん。あの音変だよ。この近くに鐘なんかないし、父さんたち何も聞こえないだと言うんだ。何かの蟲なのかな。

ギンコ:一つ聞く。お前、もう主の術習った?

コダマ:主?

ギンコ:人が主になるための術だよ。葎を体内に飼うことによって常に葎の利用をしている状態になる。眠っているときですら山の感じ知っているすべてのことがらが術者の中へ流れ込んでくる。それにたえ、葎を操るようになれば、山の以上の精気を抑制する力をも手にできる。

コダマ:まだ習ってない。

ギンコ:そうか。ああ、鐘の音の原因はなん心配する蟲ほどじゃない、家帰って寝なさい。

コダマ:どこへ行くの?

ギンコ:俺は散歩の途中なんだよ。いいなあ。山が静まり返っている。あれがそこまできてるんだ。爺、とんでもないものが呼んできた。どこだ?あの音の進路、山頂か?

ムジカ:おお、まだなぞう用か?

ギンコ:あんた、足に怪我なんてないかな。ずっと人目につかない場所で「口縄」を呼んでいたが。

ムジカ:何をいっとる?

ギンコ:近づいてくる鐘の音、あれは「口縄」の鳴き声だったかな、主食いの主。山の主、沼の主、そういうもんを食って主にとって代わる主。

ムジカ:そして、この場所にをもたらす主。こうするのは俺の使命だ。邪魔せんでくれ。あれは立派な主だった?#65310;薮螭胜恧Δい笞摔颏筏棵坤筏ぶ鳏坤盲俊0长瑦櫎盲郡韦馈ⅳⅳ螭胜长趣峡冥摔筏皮猡胜椁螭胜盲郡韦恕
ギンコ:話はあとで聞く、この山から速く出てくれ。もう遅い、「口縄」はおれを見つけた。主の座にはあのようなものがあるべきなのだ。人には辛い、コダマに伝えたも生きていくための知恵だけだ。何?

ギンコ:あんたから葎を引きあがす。

ムジカ:無駄だ、それにできてところでいいすべなど。

ギンコ:なんかなんだろう、こんな余裕など。郷の連中はどうするなよ?あんたのことを慕ってる、必要としてる。あんたは俺のことを少し羨ましいと言ったが、俺もあんたを少し羨ましかった。なのに、一人勝ってなこんなしんだん死にしんだんに決めてんなよ。

ムジカ:よせ、お前まで巻き込まれるだぞ。

コダマ:なんだ、これ。ムジカ、ムジカ?

男:おい、ムジカがきてくれたぞ。

朔:ムジカ。

ムジカ:朔。

朔:お帰り。

ムジカ:や、みんな、山はどうだ?

男:今年もいくつか妙なことが起こってる。きてくれて助かるよ。

男:おい、ムジカ、お前はこの郷に住んでくれのか?この郷にはお前さんが必要だよ。

ムジカ:そいつは無理だ。

男:どうして?

ムジカ:俺には蟲を寄せる体質がある。一つところに住めば、そこは蟲の巣窟になってしまう。

男:なんとかならんのか?朔は妹はずっとお前が来る日を待ってんのだ。ここで、あいつと世帯をもってはなれんか?

ムジカ:ここに俺が住めるとしては一つだけ、山の主を殺して食って俺が主になることだ。そうすれば、俺の意志に山で蟲を寄せつくすることもできる。俺だってここに住みたいさ。でもそんなことは許されるはずないだろう。主の通り道の地図と毒がない。一体いつかの?朔、どこ行って?

朔:ああ、ボタン分けてもらってたんだ。すぐなべにするから。待っててなあ。本当うまいつくるから。だから、だから、ずっとここにいてくれない?

ギンコ:決して自分の記憶にない夢を見た。

コダマ:山頂につくと、ギンコさんが倒れててムジカはもうどこにも。あれからずいぶん探してたけど、どこにもいなくて。郷の誰も誰もムジカのこと覚えてないんだ。

ギンコ:口縄に食われる。主の交替ってのはそういうことなんだ。そのとき山にいたものだけ記憶は残るようだなあ。あれ、この蟲払いの薬、お前がちょうほうしたの?

コダマ:うん。

ギンコ:ええ、たいしたもんだ。

コダマ:これくらいできる。俺はムジカの弟子だもん。

女:おい、玉、どうしても切れない木がある、お前何かいい知恵あるか?

コダマ:おまいく、すぐもどるから。

ギンコ:うん、きにすんな。

ギンコ:ないね、残念ながら。見事なもんだ。人の気など知りなしねえ。なあ、口縄よ。まるで欠伸でもするように、口縄は一声あげるとあとはもう静かにはらをなみうたせるばかりだった。

虫师第十二集

ヌイ:おい、こぞ。活きてるのか?お前、蟲が見えるのか?怯(おび)えることはない。あいうまだ光を帯びている輩(やから)はたいした影響力はもったいない。それとも、私のほうが恐ろしいか?これを飲め、怪我によい。早く直してでてとくれ、長いお断りだよ。

ヨキ:母さん、母さん。

母:可笑しいね、別の道にはいって間違ったのか。

ヨキ:母さん。

母:なんだ、ヨキ。また奇妙なものが見えるのかい?大丈夫、大丈夫。そんなものは幻(まぼろし)だよ。心を強く持つんだよ。

ヌイ:怯えることはない。

ヨキ:大分動かせるようになった。なんて魚だろう。真っ白で目が緑。どれも片目がない。

ヌイ:池に住む蟲のせいだ。夜や明け方は近づくんじゃないよ。

ヨキ:あのう、あれは幻じゃないよね。

ヌイ:我々と同じように存在してるだと幻とも言えない。ただ影響は及ぼしてくる。

ヨキ:俺らとはまったく違うものなの?

ヌイ:あり方は違うが、断絶された存在とはない。我々命の別の形だ。

ヨキ:そうか、そうなんだ。杖なしに歩けになった。

ヌイ:ヨキ、お前、そろそろ足がいいんじゃないのか?帰る家もあるだろう?

ヨキ:帰るとこはないよ。ずっと母さんともの売れし歩いたんだ。それに、足まだ歩くと痛い。

ヌイ:そうか。

ヨキ:それよりさあ、ずっと気になってたんけど、池の蟲ってどんなやつなの、教えてよ。

ヌイ:姿は「闇」としか言えない。

ヨキ:闇?

ヌイ:そう、「闇」には二つある。一つは目を閉じたり倉の中や月のない夜、日や明かりを遮ったときにできる闇。もう一つが「常の闇」。昼間はああした暗いところでじっとしているが、夜になると池に出て小さい蟲を食う。

ヨキ:池の魚やヌイさんがそんな髪や目になったのは?

ヌイ:明け方時に池が銀に光ってることがある。恐らく食った蟲が光に分解しただろう。あれを繰り返しびるとこうなるようだ。

ヨキ:それじゃ、ここにいたら、もう一つの目もなくなったじゃないの?

ヌイ:池の魚を見たろう?不思議と両目の魚はいない。そういうふうにできているさ。さあ、日が暮れる、中に入るよ。

ヨキ:その蟲、なんで言う名前なの?

ヌイ:闇のような姿のものは「常闇」という。光を放つのは常闇に住む別の蟲のようだが、そいつに名があるかは知らない。私は「ギンコ」と読んでいる。

ヨキ:これは?

ヌイ:食えよ。

ヨキ:じゃ、これ。

ヌイ:かじってみりゃいい。飲み込むなよ。

ヨキ:辛い、なんだこりゃ。

ヌイ:死にゃしないよ。そしてりゃ腹も丈夫になる。

ヨキ:ひでい。わあ、球になってる。散らしたの。

ヌイ:すぐまたたまるがなあ。私が山を歩くといつもこうだ。

ヨキ:ねえ、俺にもできる?

ヌイ:面白いはんぶんにやるもんじゃないぞ。

ヨキ:分かってる。

ヌイ:少々くせがきついぞ。

ヨキ:ヌイ。明かりつけようよ。

ヌイ:ああ、すまない。私の目は夜も利くよだなあ、つい。

ヨキ:ギンコのせい?

ヌイ:多分なあ。何、便利なもんだ。なあ、ヨキ。夜山を一人で歩いてとなあ、さっきも道を照らしていた月が急に見えなくなったり、星が消えたりして方向が分からなくなった気がある。それも普通にあることだわ。更に自分の名前や過去のことも思い出せなくなってるようなあ。それは常闇がそばに来ているためだ。どうにか思い出せれば抜けられると言う。

ヨキ:どうしても思い出だせないときは?

ヌイ:なんでもいい、すぐ思いつく名をつければいいそうだ。

ヨキ:そうなんでいいの?

ヌイ:その代わり、前の名だったころのことは思い出せなくなるそうだわね。

ヨキ:ねえ、どうしてヌイがここにいるの、教えていい?

ヌイ:ああ、かまわないよ。この山の先のは私の故郷がある。閉ざされているが美しい郷だ。私には生来蟲を呼ぶ性質があり一つところに留まれず蟲を払いながら郷をめぐる、「蟲師」をしてたびをしていた。それでも、足しげく私は郷を戻った、親や友人、そして何より夫と子供に会うために。だが、あるとき、夫と子そして父や友人を含む多くのものが山を入ったきり戻らないと聞かされた。私は山中を探し回ったあげく、この池にいるのが常闇だときづいた。常闇に捕らわれたらどうなるのか?どうすればいいのかはほかの蟲師より伝え聞いてた。それで、彼らはきっとまだ迷っていたのだと。あきらめきれずにここにいるのさ。

ヨキ:どれくらいになるの?

ヌイ:六年になるかね。

ヨキ:ずっと一人で。その人たちさあ、ヌイと同じ姿になるかな。そうだなあ、きっと。俺も探すの手伝うよ。いいだろう、だからここに。

ヌイ:駄目だ。

ヨキ:どうして?なにがいけないの?

ヌイ:これは私だけでやりたい。それだけだ。ここにいるための口実にするんじゃないよ。それ以上言ったらすぐにもんでなすよ。

ヨキ:ヌイはなにか隠してる。俺がいちゃ困る理由かなにかんだ。出て来い、常闇、ギンコ。なんだ、あの魚。残った半の目が潰れて、消えた。

ヌイ:ヨキ。なにしてんだ?光を浴びるのはよくないと。

ヨキ:ヌイ。片目の魚しかいないのは両目がなくなったら消えちゃうからなんだ。ねえ、知ってたの。

ヌイ:消えるのではない。ギンコの放つ光が生き物を常闇に変えるなんだ。

ヨキ:そんなの一緒だよ。どうして知っててそのままにおいたの?蟲師だったんだろう。こんな恐ろしい蟲どうして生かしておこんだよ?

ヌイ:恐れや怒りに目をくらまさるな。皆ただそれぞれなあるようにあるだけ。逃れられものからは知恵ある我々がのまれればいい。蟲師とはずっとあるか古来からそのすべを探してきた者たちだ。私もギンコの取りつづけたよ。そして魚の行く末気づいたときには私ももう光をびすぎていた。片目の魚を池から放し、光を浴びぬよう繰り替えした熱心した、だが、一度白っか始め魚たちは多少の遅れは皆たちもいずれは両目を失い、常闇になった。

ヨキ:そんな、それじゃ、ヌイ。

ヌイ:それとも、夫や子らが常闇になってしまったとは認めなくなった。光を浴びのようにして行きながら足歩いた。けど、さすがにいつからか、すべてはここにあると悟ってしまった。もう全部手遅れなんだ。ヨキ、分かったらお前はでておゆき。

ヨキ:いやだ。きっとなんとかなるよ。ここでいるよ。

ヌイ:ばかじゃいうな。もうどうにもならないし、ずっとどうにもならなくっていいとおもうのに、お前がいると、辛いばかりだ。頼むから、もう行ってくれ。お前なら旅のくらしもできるだろう。愛する故郷のないことはきっとお前には幸運だ。

ヨキ:やだ、俺の故郷ならここだ。一番長くいた土地だ。

ヌイ:違う、ここは私と常闇たちの場所。お前のいていいばしょじゃない。

ヌイ:これでもいいよなあ。

ヨキ:池?ヌイ!行っちゃやだ、行っちゃやだ。ヌイ?待ってよ。行くなよ、ヌイ。

ヌイ:なんでこと?

ヨキ:ヌイ?ヌイなんだなあ。

ヌイ:戻るんだ。

ヨキ:ヌイは?

ヌイ:私はもう。もうじきギンコが眼を覚ます。できる限り遠く行くんだ。さあ、早くおし。

ヨキ:ヌイの手温度がない、冷たくも暖かくもない。

ヌイ:お前の手はまだ暖かいよ。手だけじゃない、私はもう目玉はないが、お前の目玉がこちらを見るとまるで日の当たるように暖かいだ。あのほろの池の傍らでそれがどんなに懐かしかったか。さあ、ヨキ、ここさきは片目をとじてこゆき。一つはギンコにひれてやれ、常闇から抜け出すために。だが、もうひとつは固く閉じろ。また日の光を見るために。ああ、いけない、ギンコが眼を覚ます。

ヨキ:ヌ。あれがギンコ。常闇のそこの目のない魚。

ヌイ:恐れや怒りに眼を倉さめるな。皆ただそれぞれがあるようにあるだけ。

ヨキ:土の匂いがする。また月。これで何回目だっけ?分からなくなった。俺の名前、こいうときなんとすればいいだっけ?

その翌日、右目は日の光を見にいた。

男:何だお前、見ないがきだなあ。

男:おい、戻ったぞ。平気か、むりすんな。で、どうだ、名前以外何か思い出せたか?

ギンコ:いいや。

男:いいさ、なんならずっといってもいいぞ、とにかく明日村長のとこ顔出した行こう。

ギンコ:ただ、左眼の穴は、日のしたにおいても闇に巣食いとったかなように暗く、それは奇妙なものを寄せ付けた。このままに寄せ続けたらきっと哀れらわざわいをよぶ。そんなきがする。

男:おい、ギンコ。飯にするぞ、ギンコ、おい。どこにいっちゃった?

虫师第十三集

一夜橋

ゼン:大丈夫か、ハナ?じき橋だ。ハナ!

ギンコ:いい感じの橋だなあ、仕方ねえか。こりゃ、もうきてんじゃねえか?ああ、焦った。あんた、この近くのものか?

ゼン:うん。

ギンコ:この橋、もうもったねえぞ。帰りなきゃまた渡しねえぞ。

ゼン:ああ、本当だ、なんとかしっとけよ。いつまでいるんだ?

ギンコ:正直、わからんのだ。この文の差出人を知ってるか?

ハナの母:えんどうようこそ。さあ、どうぞ、こちらへ。娘のハナです。三年ほどまえ、あの蔓橋に谷に落ち。命は助かったもののそれ以来あして日向でぼうとするばかり、お医者はほぼ見せて周りましたが、打ったあともなく理由はまだ知れんの。

ギンコ:あれ、お前。

ゼン:どうだった、ハナの様子は?

ギンコ:なんだ、親しいのか?

ゼン:ハナをあんなにしたのは俺だ。頼む、なんとかしてやってほしい。

ギンコ:谷底へ案内してくれないか?それにハナと谷に落ちる時のことを聞かせてくれ。

ゼン:なあ、もうさあ、泣くなよ。

ハナ:だって、もう盛られない。本系からの縁談じゃ。

ゼン:そりゃ、断ったらこの郷へのご支援は切られるかな。まあ、断れねえけど、逃げようか。

ハナ:でも、そんなことしたら、家族皆が村はじぶにされている。

ゼン:俺の親は分かってくれる。お前の親だって本当にお前の幸せを望むなら、耐えられるはず。ここにいたんじゃ、望むなんか活きられない。谷を出て山越えて広くて明るくて地に行こう。そうしよう、ハナ。

ゼン:気をつけろ、そこ少しもろうになった。

ハナ:ゼン。

ゼン:どうした?

ハナ:やっぱりだめだよ。こんなふうに私たちだけ、幸せなんかになれないのよ。

ゼン:ハナ。

ハナ:私耐えられるよ。ゼンはずっと私のことを思ってくれるだろう?私はずっと思ってる、向うへいってじっと心を殺しても。

ゼン:そんなの。俺はいやだ。とにかく橋を渡しまう。ハナ。ハナ!

男:見たか?

男:みれん。

ゼン:到底助からない高さで落ちたのに花は自分の足で歩いても戻った。ただ、中身は蛻(もぬけ)の殻になってしまっていた。皆谷戻りになってしまったって嘆(なげ)いたよ。

ギンコ:谷戻り?

ゼン:この村に稀にそういうものが出るそうだ。谷に落ちて戻ったはいいが、心は食われていて。谷に一夜橋のかかる夜、死んでしまう。まあ、いちたいにするかな。

ギンコ:一夜橋?

ゼン:谷に一夜限りの橋をかかるのは見たものがあるだと。もうずいぶん前の話だが。

ギンコ:うん?

ゼン:どうかした?

ギンコ:いや、いるようだな。

ゼン:なにか?

ギンコ:ハナをいまのっとてると同じものだ。

ゼン:ハナがの取られてる?

ギンコ:偽蔓という蔓状の蟲なあ。

ゼン:なにもいないぞ。

ギンコ:普通見えにくいものなんだよ。偽蔓じゃずいぶん弱弱しいなあ。逆方向に引っ張ると丈夫なのは文献に偽蔓と同じか。うん?もう日が差さなくなるのか?残る日向に集まっていく。ここは日の引くが足りすぎるのか。

ゼン:どう?何か分かった?

ギンコ:お前には酷なことを言う。「谷戻り」も「一夜橋」も恐らくただの言い伝えじゃない、どっちも偽蔓で説明がつく。普通、偽蔓は木の上で生活しているものだが、この谷の偽蔓は生物の体をのっとることで谷の底へ出ようをしているだろう。やつらはもっと日の光は必要だった。谷を上る力は備わってないからだ。そして、生物の体を宿り、日の光

を浴び、力を蓄える。そういう輩が一定の数に達することに宿主からでてれをなし谷をあたり。より望ましい場所へ移住する。それが一夜橋じゃねえか。以前聞いたことがある。およそ二十年ごとに蟲のあたりがある谷があるとなあ。

ゼン:じゃ、なんであのとき谷戻りは死ぬでんだ?その蟲やらが出たら元に戻るんじゃないのか?

ギンコ:調べた歩いたが、この谷底には動物の骨は見当たらない。偽蔓は死体に寄生している可能性は高い。だとしたら、抜けてても死体に戻るだけ。

ゼン:そんな、じゃ、ハナはいずれ。今年だ、前に一夜橋が見られるのは俺の爺さんが生まれたと聞いた。爺さんは今年六十だ。なんとか伸ばせないか?

ギンコ:それは。

ゼン:元に戻しのは望まない、少しでも長く活きてくれればそれで、だから。

ハナの母:それでは。

ギンコ:残念ながら。このままにしておくのは一番長く活かれるすべが。

ハナの母:その蟲を除くことはできるでしょう。

ギンコ:ええ、ですが、そうすれば、十中はくその場でなくなります。

ハナの母:かまいません。あこのがこのままで活きていては幸せだとは思いですか?なら、一層。

ギンコ:そんな無謀な賭けをしなくとももし三年前のあのとき活きていたなら。一夜橋の出たあと無事元に戻る。

ハナの母:そんなもの、本当にいるか、いつでるかわかりしない。花が元に戻れば、もらってくださる良縁があるのです。もうこれ以上おわたせするのはいけないです。

ギンコ:そんな話は乗れない。彼女はもう彼女とは言えないが、それでも、また生かされている。もののようにはつかない。

ゼン:ギンコさん。もう行くのかい?

ギンコ:そうしたいだが。

ゼン:これで明日中には橋を補強しとくから、家で休んでくれよ。

ギンコ:ここにお前だけで住んでのか?

ゼン:家族はこの郷にいるけど、俺はほれ村はちぶぜいやつだ。郷のものとは絶縁されてる。一人で出て行こうとは思わなかったか?

ゼン:まあ、なんども思ったが、ハナがいきてたからなあ。ハナがいなくなったら、多分そのうち出て行くよ。

ギンコ:何の音だ?

男:とうとう落ちっちまったか。あんた渡ったじゃなええのか?ここと誰も使ったねえかな。

ギンコ:早く架け替えてくれよ。頼む。

男:しかし、皆仕事合間の作業だ、少々時間はかかっちまうぞ。

ギンコ:くそ、なんでこうなった?

ハナのはは:ゼン!蟲師の方をかくまれてそうだね。まだ話は終ってないよ。

ギンコ:冗談じゃねえよ。あれも谷戻りか?もしやこのあたりにもっといるんじゃ。

ゼン:ハナ。どうした?どこいくんだ?ハナ。暖かい。お前ちゃんといきてくれてたんだ。なあ、お前、ハナだよな。なにもかも忘れちまうだけだよなあ。

男:いたぞ。

ハナの母:ハナ。ゼン!お前一体なにを。ハナに二度と近づくなといっただろう。ハナ。

息をすてない。ハナ、すっかりをしなさい、ハナ。

ギンコ:ゼン!どうした?

ゼン:ハナが死んだ。首から黒い縄が抜けてた。

ギンコ:そうか、なあ、ゼン。お前もここへ出て行くか。そのほうがいいだろう。

ゼン:ええ、でも。

ギンコ:恐らく一夜橋今夜が来る。こちらがあからなら離れるはずだ。そこら中見えるが力を蓄える偽蔓がいっぱいだ。夜半めでには決めることだ。この機をのだすといつでられるかわかるぞ。

ギンコ:来たか。みれんはないなあ。この橋、戻れば落ちるぞ。何、なんとかなるさ。

ゼン:そうだ、忘れよう。きっと忘れられる、ここを出れば。

ギンコ:どうした?何してる?もうもどれはしないぞ。

ゼン:進めない。この中にハナだったやつがいる。

ギンコ:違う。ハナは三年前死んだんだ。

ゼン:違わない。俺はこの三年ハナが生きてくれたらやってくれた。あの姿を見るのは辛かったけど、いまとなっちゃ、まだ増しだ。見つけたないぞ、進めない。

ギンコ:戻るな。

ギンコ:そのご、彼がどうなったか正しくは知れない。だが、恐らく。あの谷に一夜ばかりの橋がかかるのはおよそまた二十年ほどのち。

虫师第十四集

笼のなか

ギンコ:その竹林に休んでいると奇妙な男に声がかけられた。

喜助:あのう、もし、旅の方で。

ギンコ:ああ、そうだが。

喜助:それなら、山を降りるんでしょうなあ。

ギンコ:ああ、この西のほうへなあ。

喜助:それはちょうどいい、ついてあるいてはかまわないか。

ギンコ:道に迷ってのか?

喜助:ああ、どうしてもこの竹林にでられるんだ。

ギンコ:よほどの方向ウンチだなあ。

喜助:困ってたんだよ。もう三年も人通りだなあ。

ギンコ:三年?

喜助:ああ、可笑しいだろうが、俺はずっとここに出られずんだよ。もともと麓の郷のものだが。

ギンコ:なんだ、地元もんかよ。日も见えないわけでなしなんで方かく失うんだ。

喜助:それが、自分でも分からんだよ。

ギンコ:しかし、広い竹林だなあ。ああ?くそ、まだ戻った。そういうことだ?磁石はくるっちゃいない。俺たちは始めに西へ向ってる、なのに、きがついたら芯から离れて。ずれたずれてはきく、一周してる。

喜助:そうなるんだ。自分の意识で进められない。

ギンコ:なんなんだ、こりゃ。

喜助:あんたも捕まったなあ。こうなったら、とりあえず、俺らと暮らすかい?

ギンコ:冗谈じゃねえぞ、おい。うん?ほかにもいるのか?

喜助:ああ、もともとここに住んだ亲子だなあ。

节:喜助。

喜助:母はもういないが、娘はいまじゃ夫妇(めおと)だ。もともとさな驯染みだし、まあ、不幸中の幸いだ。旅の方だ、ちょっと话よなあ。嫁の节だ。ギンコさん、つき合わせてきまなかったなあ。俺はもう家に戻るよ。あんたも休んでいくかい?

ギンコ:いいえ、もう少し别の方法考えてみるよ。

喜助:そうか、それじゃ、元気でね。

ギンコ:元気でなあ。どう思う妙だ。抜けた?やれやれだ。何か?

女:いいや、あんた、あの竹林から出てきたの?中で男见なかったかい?

ギンコ:ああ、あれはからかわれたかね。なんなんだ、あの男は?

女:化け物にとらちまってんだよ。あんた无事でよかったよ。

ギンコ:化け物?

喜助:ギンコさん、あんた出られないのかい?

ギンコ:いいえ、见たいものがあって戻ってきた。この竹林に白い竹が入ってるって郷で闻いた。それと、あんたや嫁さんのことも少しなあ。

喜助:それを见てどうしようでんだい?

ギンコ:それは俺のなりあいの范畴のものが、详しく话しを闻きたい。非常に稀な现象なあ。もしかすると、あんたここから出られるすべもあるかもしれん。あんたもしこれ以上ふみこむなと言うなら、一人でやるかも。

喜助:こっちだ。これ以外にも、あと四本ある。

ギンコ:うん。やっぱり「间借竹」だなあ。まずは闻かせてもらえるか?この竹林で起こったことのすべたをなあ。

喜助:俺の郷の子らが闻かされて育って话だ。この竹林に若い夫妇が住んでいた。夫妇は长年子ができず夫は阴気な家をあけるようになった。女は草木と话をするような代わりものだったが、やがて夜のやな竹林を徘徊するようになった。そして、ある时子ができたという。夫は女房が怪しいんである晩に女房の后をついてた。すると、女房は陶然と白い竹にすがりついていた。夫は気もを溃して逃げ出したが、郷の人々に咎(とが)められ家へ戻った。女は竹の子を赤子のように抱えた。

ギンコ:竹の子产んだてか?

喜助:本人はそういったけど。

ギンコ:旦那へのいやらかせだったじゃ。

喜助:结果、夫は郷から逃げ出しちゃったし、俺らもそう思ってた。実际、俺らが子供のごろ「竹の子」を见に来たときも普通の娘にしかみえなかったね。それが、节だった。あのごろはすでに母亲がなくなっていて、一人じゃ寂しいだろうと俺の妹や仲间らとよくここで游んだ。ただ、节は异质なのだと感じていた。彼女は水しか口にせず、决して竹林からは出なかった。それでも、みんな节のことは好いていたんだ。だが、あるとき俺らは竹林から出られなくなった。皆はぐるぐる竹林を回り次第に一人二人が见えなかった。気がつけば俺は一人で取り上された。翌日、郷に戻った连中が探しにきてくれたが、俺と一绪だと皆竹林から出られなかった。

ギンコ:やっぱり、知ってておるの巻き込んだなあ。

喜助:あはは、すまない、他所の人ならどうかなった思ってたんだよ。それからは节の家出暮らした。俺は妹以外に肉亲はなくて郷のもので食う物なんか世话してくれた。俺と妹

は郷の皆で育っててもらったようなものだ。皆家族みたにないい郷だった。だが、そんな暮らしが长引くと郷のものらの访问も减っていた。

节:喜助、寂しい?

喜助:いいえ。

节:なら、よかった。

喜助:やがて、节は 。だが、そのとき、初めて俺は节の筋をおもいした。产婆は郷へ逃げ帰り、それ以来谁もここへこなくなった。ってわけだ、信じられないかもしれんが。

ギンコ:まあ、惊いたわね。

喜助:て、あんたが言う「间借竹(まがりたけ)」ってのはなんなんだ?

ギンコ:なに、竹とつくが、草木ではない。竹というのは竹林一体同じ根を持つそれらすべてで一つの子。または世代交替する家族という。「间借竹」はその根に寄生し家族の一员になり住む虫だ。竹の根から养分を吸って立つが、その分竹林茂らせる成分を根に戻し竹林を広げ自分の子株を肥やしていく。あんたの女房は虫を人の间の子。俺たち虫师は「鬼虫」と呼ぶ。非常に稀な「混ざり物」だ。少々答えたか?

喜助:いいえ、もう娘の生まれた姿见た后だしなあ。亲がなんでも节は节だ。郷の皆はそう思えようだが、节に会えば分かってくれたはずだ。いつか三人で郷で暮らすことで。

ギンコ:それはなんとか外へ出たいわけか?

喜助:ああ、それに妹のことが気上がりんだ。俺のせいで辛い思い出してないか。

ギンコ:一つ考えがある。不自然に方向を変える地点にするとほぼしんえんだ。円の中心にあるのはあの株か?それがあんたの「命の水」かい?

节:ええ。

ギンコ:少し分けてもらっていいか?

节:ああ、ごめんなさい、大事な水だから他所さんにはやるなって母さんが。

ギンコ:喜助にも?

节:ええ?一度だけあげっちゃったけど。まだ子供のごろ。

ギンコ:ねえ、あんたは郷のものらに忌み嫌われるのはやはり辛いか。

节:そうね、でも私は喜助と娘がいればいい、喜助は出られなくてかわいそうだけど、私はそれがうれしいの。

ギンコ:悪いが、少し失敬するよ。やっぱり出られないか。こいつは厄介だなあ。

喜助:ああ、今年も叶が落ちるなあ。竹の子供がでっかくように竹の母ちゃんが叶っぱご饭やってんだ。

竹の子:うん、どれが母ちゃん?

喜助:皆だよ、皆が子供を育ってるんだ。父ちゃんはこの季节に里のことを多く思い出すよ。広くてなあ、日がいっぱい差して赈やかな里なんだよ。お前にも见せてやりたいなあ。

节:大丈夫よね、喜助はきっと大丈夫。

喜助:じゃ、原因が分かったのか?

ギンコ:ああ。虫には草木と违い意志がある。体の各部员に命令を下し意志を遂行する。この虫にとっての体はこの株を中心にした竹林一円だ。そしてその意志を伝えるものはこの节たち饮むの水だ。普通の水はこの株に近づいても反応はしない。この水を持ってるだけでこのむしに感覚されてるんだ。无论、それを口にしたもの。そして、そのそばにいるものは。

喜助ちゃん:今日は暑いなあ、喉が渇いた。

节ちゃん:一口あげる。

ギンコ:节はそれ知っていたはおもえんが。

喜助:だが、じゃ、どうすればいいだ?

ギンコ:それがなあ、体から水を抜ければいいだ。正直、そのすべは思いすかん。もう一つ手段は考えられたが。それは、俺もやりたくない。どんな影响があるかしれん。

喜助:そうか、そうか。それなら、あきらめる。

节:あなたが喜助をとらえてくれてくれたね。ありがとう、ごめんなさい。どうして?

ギンコ:あんたにはできねえはずだ。あんたはそいつの子株。そいつのからだの一部だ。脳に手足がさからにようなあ。全部闻いていたのか?

节:喜助は私のせいで。

ギンコ:でも、喜助は不幸だったわけじゃない。

节:喜助はこんな筋の私に幸せにしてくれた。なのに、私は喜助から郷を夺った。喜助は言ってくれたのに。亲がなんでも私は私だって。

ギンコ:もうよせ!

喜助:节、どこへいっちまった。郷だ。おい、俺だ、喜助だ。やっと出られたんだ。

喜助の妹:お兄ちゃん?

喜助:ああ、元気だったか?

喜助の妹:それで、例の子供?

喜助:ああ。

喜助の妹:帰って!

喜助:话えを闻いてくれ。

喜助の妹:そんなもん郷へ连れておりないで。私ももう子供がいるの。子供にまでかたせまいをさせないで。

竹の子:ねえ、お母ちゃんは?

喜助:そうだなあ、戻ろうか。

ギンコ:それから、しばらくは三人は幸せに暮らしてという。だが、半年の待ち。亲株を切った影响を见に戻ると。「间借竹」は一本もない。

喜助:あんたか。あれから、白い竹は次々に朽ちてしまった。あいつらはあの水のあってのものだった。苦しんで、ここで、二人をめろごろには枯れ木みたいにぼろくなってた。节はあんなことしちゃならなかった。あれは节の亲だった。俺がそうさせた。俺は郷を舍て切れなかった。ああ、もう今年もそんな时期か。うん?白い竹?いつのまに。赤子の声。二人だ、墓のほうからだ。

虫师第十五集

春を啸く

ヌイ:谁も息を潜めるごろに芽吹くが春のまがい物。春と浮かれて长いすれば、いつしかその身は冻りつく。

ミハル:あれ、花が咲いている。蝶だ。

すず:どちらさん?

ギンコ:この雪で困ってるが一晩宿頼めんだろうが。

すず:どうぞ。

すず:あれ、ミハル。行ったのかしら。

ギンコ:なにしてんだ?ああ、危ない、马鹿、よせ。

すず:ミハル。あのう、そのこ。

ギンコ:妙なもの见つけてもやたら手を出さんようにいっとくんだなあ。

ミハル:でも、あれ珍しいやつだったのに。

すず:あんたまたやってんのね、この马鹿。

ミハル:痛い。

すず:あのう、あなたこの子の见てるものあなたにも见えるの?

ギンコ:俺たちは「虫」って呼んでた。あれが见えるものにも恐れるものと亲しいものあるんなあ。あの子はめっぽい后者だなあ。

すず:ええ、もともと生きものが好きで捕まえては持って帰る子だったけど。三年前の冬あれが见えるようになったから、あのこの行动は怪しいばかり。あの冬、ミハルは山へ入ったきり行方不明ずになった。それから数日吹雪が続き。

男:帰ろう、これ以上は无理だ。

すず:望みは绝たれたものと思いました。けれど、春になってひょっこり帰ってきたんです。それ以来、妙なものが见るって言って梦中で思わすにより、冬の食べ物は底をつくごろになるとふいと姿を消すようになったんです。そして、晩には郷の外れて倒れていて。そのままこんこんと春まで眠いつづけるんです。そして、懐に冬のあるはずない山菜や木の芽をもばせているのです。一体どこかへ行って闻いてても。

ミハル:覚えてない。ふくは家の外であけちゃだめだよ、皆に知るたら面倒から。

すず:としか言わなくて。家は兄弟二人だけだから、助けようとしてくれてのは分かるんだけど、不安でならないんです。どう考えたてあのこと可笑しいわ。

ギンコ:うん、それは「春纷い」って言ってやつかも。

すず:春纷い?

ギンコ:木に咲く花のような姿をした「啸(うそぶ)く」っている虫が闻く。そいつは特殊な匂いが出して冬めん中の动物や植物の活动を动かすそうだ。そして、诱き出した动物の精気を吸う。吸われたものは春まで再び眠りつづけるという。それ以上のことはわからんがな。

すず:あのう、虫って一体なんなの?

ギンコ:そう恐れるものばかりでもない。下手に手を出さなきゃそう困ることでもないが。あいつの场合はなあ。害のあるやつを教えとくくらいはできるが。

ギンコ:おい、ミハル。あそこにいるやつ、あれはっちょいと厄介からなあ。おい、人の话聴け。

ミハル:ほらほら、こういうところにいっぱいだ。

ギンコ:出すな、出すな。ちった落ち着け!くそ、やすけいは言いすぎたなあ。お前さ、どこで山菜见つけてきたんだ?

ミハル:しらねえ。

ギンコ:别によこどりしようってねえからさ。案内してくれよ。

ミハル:姉ちゃんに言うつもりだろう。

ギンコ:おれはただ调査しときしたいだよ。お前さ、心配かけての知ってるだどう。姉さんに场所くらい教えてやるよ。

ミハル:そうしたら姉ちゃん追っかけてだろう。

ギンコ:役に立ちたいのも分かるが、姉さんの気持ちもししてたんじゃ、それも我がままにすぎだろう。お前には戻るべきところがあるんだ。あんまり向うの踏み込みすぎるなよ。

ミハル:ああ、これ见た。

ギンコ:じゃ、この辺はどうだ?

ミハル:うん、知らない。

すず:ミハル、ちゃんとやりなさいよ。あのう、ギンコさん、明日も続きいいかしら?

ギンコ:かまわないよ、いまのところほかに用もないし。

すず:それじゃ、いつまでいられるの?

ギンコ:どうだろうなあ、土地にもよるが、まあ、こいつが一通り辺にいる虫を覚えるまではいられるだろう。饮み込みはいいかなりし。后十日くらいか。

すず:土地によるって?

ギンコ:俺はどうも虫を寄せる体质でなあ。虫の多い豊かな土地だとは长くいられない。集まりすぎるといいことはない。ここはミハルの见てる虫の种类からしても豊かな土地では言えようだ。他所のながりは触らないだろう。

すず:なら、いられるならいいよ。ほら、冬の旅は大変でしょう。春までいればいい。

ギンコ:そりゃ、山の様子次第だ。

ギンコ:なんだ、ありゃ。蛹(さなぎ)?あの辺だったよな。虫のように见えたが。そろそろ読み始めたかな。やはり、以前と比べて増えている。少しながいしすぎたなあ。

すず:ああ、ギンコ。郷に用があるの。ミハルお愿い。今中で寝てるから。

ギンコ:ああ、きをつけてなあ。おい、ミハル。あのやろう。またふらふらてあげてのかい。どこまでいったんだ?くそ、どっちへいった?ミハル!一旦戻って立て直すか。ミハル、おい、もしや。「春纷い」か?

ギンコ:なあ、すず。そう思いつめるな。いつもと同じ症状だろう?なら、春にはちゃんと目覚めるさ。

すず:うん。

ギンコ:それまで付き合ってやりたいが、俺はもういかんにかならん。

すず:そんなの、ミハルが起きたら寂しいがある。

ギンコ:すまないなあ、また颜见に来る。

ヌイ:谁もが目覚めをうたうごろ、纷いものは眠りにつく。そして、また冬山で一人春と啸く。

ギンコ:よ、すず。

すず:ギン。

ギンコ:あれから一年ずっと眠ってままだったのかい?

すず:うん。一体何かいけなかったのか分からなくて。

ギンコ:ミハルが行っていた场所を探し出すしかないなあ。

すず:でも、それじゃ、ミハルと同じなってしまうかも。

ギンコ:ミハルは春に目覚めたはずだろう。目覚めるの何かを足りないだ。行けばそれを分かるはず。戻らないなら、北侧に探してくれ。

ギンコ:去年、ミハルの足迹はこっちへ向ってたよな。くそ、一体どこに?sれは、ミハルの袋に入ってた。甘い匂い。あっちだ。眼が眩(くら)む。早くでたほうがいい。「啸き」は木につく花の形だったなあ。どれも普通の花にしかみえん。手がかりはいったいどこにある?どんどん体温が下がっていく。匂いが変わってる。なんだ、急に体が冷えていく。手が动かねえ。なんで、あの蝶だけが?こいつ、くそ、分かってたのに、眠くてしょうがない。

すず:なか、ギンコのばか。あたし、どうしたらいい、どうしたら起きたかの?何?何か出たしなようがしたけど。

ギンコ:何の匂いだ?そうか、もう春か。なんだろう、ありゃ。

すず:ギンコ。

ギンコ:ミハルは?

ミハル:姉ちゃん?

ギンコ:その后、天顶の花のようなものが数日の间强い芳香を放ったのちに覚えある姿に変わった。あのとき见たさなぎみたいのは啸きだったな。て、お前は啸きの羽化が春纷い発生の合図に知ってたわけか。

ミハル:うん、ギンコが蝶を逃がさないたら春には花にちゃんと起こしてくれたはずなんだよ。

ギンコ:どういうことは先にいっとけだよ。

ミハル:俺、あいつらが好きだから、秘密にしっときたから。冬に山菜を生やして助けてくれるし、雪の中で飞んでるもきれいだし。でも、あいつらはそうやってさわっていきてるだけなんだよなあ。

ギンコ:なんだ、分かったきてるじゃねえか。そう、やつらは决して友人じゃない。ただの奇妙な隣人だ。気を许すもんじゃない。でも、すきでいるのは自由だがな。

ミハル:うん、なあ、やっぱり一遍に家によってきたよ。

ギンコ:いいや、ずいぶん长いいっちまったからなあ。一刻も早くでたほうがいい。

ミハル:そんなの、姉ちゃん寂しいがある。

ギンコ:世话になったいってくれたよなあ。

ミハル:なあ、また来るよなあ。

ギンコ:さな、まあ、冬じゃねえときだな。

ミハル:なんで?

ギンコ:人间も冬に弱っていかんからなあ。

ヌイ:行って山に芽吹く幻春。雪地に通る家の明かり。それらは逃れがたく长いを诱う。獣も虫も人も同様。


本文发布于:2024-09-23 18:19:56,感谢您对本站的认可!

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